研究課題/領域番号 |
15K17864
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
西村 達也 金沢大学, 物質化学系, 准教授 (00436528)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | バイオミネラリゼーション / 液晶キチン / 炭酸ストロンチウム |
研究実績の概要 |
バイオミネラリゼーションの形成機構に学び、これまでに我々が開発してきた手法を用いて、薄膜上リン酸カルシウムの作製を試みた。 生体無機結晶成長では、タンパクや生体高分子の働きによって、アモルファス状の無機結晶が安定化され、それが前駆体として働くことで精緻な階層構造を温和な条件で作り出していることが近年分かっている。そこで、我々は高分子/高分子の相互作用を用いて無機結晶(リン酸カルシウム・炭酸ストロンチウム)の前駆体を人工的に安定化し、炭酸カルシウム薄膜結晶の作製手法を開発してきた。 本年度は、配向マトリクスが無機結晶の結晶成長に及ぼす影響について調べるため、液晶性キチンマトリクスを作製し、それを用いた炭酸ストロンチウムの結晶成長実験を行ない、配向マトリクス一面にマトリクスの配向に沿った薄膜結晶が得られることを見出した。 詳しい解析により、結晶成長溶液内に形成したアモルファス炭酸ストロンチウムが基板近傍で結晶化し、配向マトリクスの分子鎖に沿って成長していることが分かった。 特に濃度を変化させて結晶成長の速度を変化させた場合、薄膜の配向を自在に変化させることが可能であった。今後の機能性無機結晶薄膜への展開が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
液晶キチン誘導体から得られる配向マトリクスが様々な無機結晶に及ぼす影響が明らかとなったため、おおむね順調に進展していると判断される。さらに、アモルファスを経由するこの結晶成長手法が炭酸カルシウムだけでは無く、他の結晶成長にも利用可能であることを示した本結果は大変意義深い。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、リン酸カルシウムや酸化亜鉛について、高分子マトリクスを用いて複合化することを目指す。具体的にはアモルファス前駆体を安定化し、それをマトリクスと相互作用させることにより、結晶成長の制御が可能となると期待させる。特に、結晶成長基板として配向構造をもつ高分子を液晶性高分子から作製することができれば、巨視的に配向した機能性無機薄膜が得られる可能性があるため、積極的に用いていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
酸化亜鉛の薄膜結晶の作製、およびその形成条件とパターン構造のピッチの制御、形成機構を調べるために時間を要した。その分、その他の液晶性高分子に関して次年度に合わせて請求し、同時に行う計画を立てる必要ができた。
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次年度使用額の使用計画 |
リン酸カルシウム薄膜の巨視的な配向を目指し、液晶性高分子の開発を行う。さらに、リン酸カルシウムを用いたバルク材料について開発の可能性を探るため、コレステリック液晶を利用したマトリクスの作製のための有機高分子合成試薬代として計上する予定である。
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