これまで我々はN-ヘテロ環状カルベン(NHC)を触媒として用いることで、(メタ)アクリル酸エステルや(メタ)アクリロニトリルなどのtail-to-tail二量化反応が起こることを見出している。この反応は、極性ビニルモノマーのベータ炭素間での炭素-炭素結合を可能にするものであり、ビニルモノマーからジエルテルやジアミン誘導体を合成する興味深いプロセスである。この反応を基盤とし、これまでほとんど着目されてこなかった、ビニルモノマーを原料とした縮合系高分子の合成を行った。 まず、二量化反応の基質適用範囲の拡張と、条件最適化を図った。NHC触媒は様々な官能基に対して耐性が高く、非常に広範囲の基質に適用させることができた。これまで同様の反応を進行させるルテニウム触媒とは対照的である。特に金属錯体触媒が苦手とする塩基性官能基(ピリジル基やアミノ基)およびかさ高い置換基を有していても二量化反応を進行させることに成功した。次に反応条件の最適化について、メタクリル酸ブチルを基質に用い、マイクロウエーブ照射下200℃で加熱することで、触媒回転数147回を達成した。これらの知見を活用することで、高分子合成へも展開した。例えば、メタクリル酸2-ヒドロキシエチルにNHC触媒を作用させることにより、二量化反応とエステル交換反応が進行し、不飽和ポリエステルが得られた。さらに、メタクリル酸ブチルとジオールとの組み合わせからも、直接的に不飽和ポリエステルを合成できることが分かり、メタクリル酸エステル類は重縮合用のモノマーとしても利用できることを見出した。
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