研究課題
これまでの我々の行っているLixMn2O4正極材料の研究において、Mn2O4母材にLiが挿入されることでMn3d軌道が非局在化することを示唆する結果が得られていた。そこで、平成27年度はMn3d軌道の非局在化を実験的に検証するために、Li組成の異なるLixMn2O4 (x=0, 0.7, 1.233, 1.5, 1.7, 2.0)の磁気コンプトンプロファイル測定を行った。得られた磁気コンプトンプロファイルは、Li量に依存して異なる形状を示した。磁気コンプトンプロファイルからスピン磁気モーメントを算出した結果、Li量x<1の範囲ではLi量の増加とともにスピン磁気モーメントが増加することが分かった。この傾向は、強磁性状態を仮定した第一原理バンド計算から得られたスピン磁気モーメントのLi量依存性の結果と一致するが、実験から得られたスピン磁気モーメントの絶対値は、第一原理計算のから得られたスピン磁気モーメントの値に比べ一桁程小さかった。一方、x>1の範囲ではLi量の増加とともにスピン磁気モーメントが減少する結果が得られた。X線回折の結果から、X=1を境に構造が異なることが分かり、X>1の領域におけるスピン磁気モーメントの減少は、この構造転移が影響していることが示唆されるが、詳細な原因の究明には、第一原理計算を用いた理論計算との比較が必要であると考えている。また、平成27年度は、LiCoO2正極材料の電子構造について密度汎関数法を用いた計算を行った。その結果、リチウム挿入に伴う酸化還元軌道には、酸素2p軌道が寄与していることが分かった。更なる解析についても現在進めている。
2: おおむね順調に進展している
平成27年度は、計画通りLixMn2O4(x=0, 0.7, 1.233, 1.5, 1.7, 2.0)の磁気コンプトンプロファイル測定を行った。得られたコンプトンプロファイルは、Li組成に依存して、その形状が変化するものの、コンプトンプロファイルから算出したスピン磁気モーメントは、SQUIDで測定した磁気モーメントに対して一桁ほど小さな値なったため、理論計算などとの比較から、より詳細に解析を進める必要があることが分かった。
現在、LixMn2O4から得られた磁気コンプトンプロファイルの解析を進めている。今後の研究の推進方策として、第一原理計算を用いて電子運動量密度の理論計算を行い、実験結果との比較からLixMn2O4の電子構造を明らかにしたいと考えている。
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