研究課題/領域番号 |
15K17875
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
植田 郁生 山梨大学, 総合研究部, 助教 (50598688)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 試料前処理 / 試料濃縮 / 多環芳香族炭化水素 / ガスクロマトグラフィー / セスキテルペン |
研究実績の概要 |
初年度である平成27年度は分配型捕集デバイスに充填する捕集材の開発および評価を重点的に実施した。まずは当初の計画通り、捕集材の担体に非多孔質シリカ粒子を用いることを検討した。比表面積が約2 m2/gでメソ孔およびミクロ孔がほとんど存在しない、マクロ孔シリカ(MPSi)粒子を担体として検討した。そして、このMPSiの表面にオクタデシル基(C18)を化学修飾させたMPSi-C18粒子を開発した。MPSi-C18粒子をガラスカートリッジに充填し、新規捕集デバイスを試作し、半揮発性有機化合物(SVOCs)の抽出効率および脱着効率等について定量的にて検討した。SVOCs試料として、セスキテルペン類および多環芳香族炭化水素(PAHs)を検討した。 MPSi-C18充填デバイスは、非常に優れた脱着性能を示し、5 mL程度の非常に少量のアセトンを通液するだけで、捕集したSVOCsを完全に脱着させることが可能であった。多孔質シリカを担体に用いると、この様な優れた脱着性能は見られなかった。したがって、MPSiの有するマクロ孔構造が、SVOCsの高い脱着効率に寄与していることを見出した。MPSi-C18の抽出力は、捕集温度(外気温度)に大きく依存することが分かった。これは、分配作用によってSVOCsをC18に捕集しているためであると考えられる。捕集温度35度においては、空気捕集量3 L程度で一部SVOCの破過が見られた。開発したMPSi-C18デバイスを用いて、杉の葉から放出されるセスキテルペン類およびタバコ副流煙中のPAHsの定量分析に成功した。 また、MPSi表面にポリジメチルシロキサン(PDMS)を被覆させた分配型捕集材の開発も進めており、MPSi-C18を上回る抽出力と優れた脱着性能が得られてきている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初開発予定であった、マクロ孔シリカ(MPSi)表面にオクタデシル基(C18)を化学修飾させた粒子の開発に成功し、その抽出力や脱着性能について定量的に評価すると共に、実試料への応用にも成功した。 さらに、MPSi表面にポリジメチルシロキサン(PDMS)を被覆させたMPSi-PDMSの開発を進めており、MPSi-C18を超える優れた捕集力と脱着性能が確認されてきている。そして、これら分配型デバイスを用いて空気環境中のSVOCsを捕集する際の、温度、湿度による影響や捕集後の保存性能、分析の再現性等についても定量的に評価してきているため、当初計画以上に研究が進捗していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
まずはマクロ孔シリカ(MPSi)表面にポリジメチルシロキサン(PDMS)を被覆させた粒子の評価を引き続き実施する。被覆させるPDMSについても、分子量の違いにより種類が存在するため、PDMSの種類の違いによるSVOCsの捕集および脱着性能の違いや、被覆させるPDMSの量と捕集力および脱着性能との関係等について検討する。 さらに、MPSi-PDMSよりも捕集力を向上させた抽出媒体粒子についても検討する。少量の有機溶媒で迅速かつ完全に捕集したSVOCsを脱着せることが可能で、かつ、大気中の微量SVOCsを分析するために必要な高い抽出力を併せ持つ抽出媒体粒子の探索および開発を実施する。
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