生細胞内でのRNAイメージングの報告はこれまでのところごく少数に限られ、確立した方法がないのが現状である。そのため、実用的なプローブの開発が望まれている。生細胞内の遺伝子検出法として標的核酸を鋳型とした化学反応プローブがある。この遺伝子検出法の利点は標的核酸を鋳型とした反応サイクルを回すことで、シグナルを増幅することができる点にある。しかし現在の所、生細胞内で検出できるRNAはβアクチン等の細胞内で発現量の多い遺伝子に限られており、さらなる検出感度の向上が求められている。加えて、これらのプローブの多くは蛍光基質の構造変化をシグナル発生の鍵としているため、使用できる蛍光波長に制限がある。 申請者はこれまでに芳香族求核置換反応を利用した化学反応プローブを用いて0.5 pMの微量遺伝子のシグナルを1500倍に増幅することに成功している。しかし、青色蛍光のクマリンを用いていたため生細胞内への応用は困難であった。そこで、本研究では、生細胞内での遺伝子検出が実用可能なプローブの構築を目指し、芳香族求核置換反応を利用した検出プローブの高いシグナル増幅能を維持したまま、クリック反応を利用したポスト修飾により、プローブの簡便な多色化を試みた。前年度に引き続き、転移部位をDNA鎖に導入した後にアジド修飾蛍光分子とのクリック反応を試みたが、適切な反応条件を見出すことが困難であった。そこで先に転移部位と蛍光分子とのクリック反応を行ってから、DNA鎖に導入を行い、検出用の転移プローブを得た。そして、消光剤であるメチルオレンジを連結した転移部位を組み込んだ転移プローブが標的DNA存在下で芳香族求核置換反応により分子移動することを確認した。また、求核部位に保護基を導入したプローブを用いた場合、その反応がチオール類の有無でコントロールできることを確認した。
|