研究課題/領域番号 |
15K17877
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
藤井 健太 山口大学, 理工学研究科, 准教授 (20432883)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | イオン液体 / イオンゲル / ゲル化反応 / 酸塩基反応 / 二酸化炭素分離膜 |
研究実績の概要 |
本研究は、極めて低い高分子濃度で高強度なイオンゲルを与えるポリエチレングリコールを骨格とした四股高分子(TetraPEG)に着目し、<1> これをイオン液体(IL)中で効率的に反応させる方法論を溶液反応論に基づき確立すること、<2> 得られた理想均一網目構造を有する高強度イオンゲルを二酸化炭素分離膜へと材料展開することを目的としている。本年度は主に課題<1>について取り組み、TetraPEGのゲル化反応メカニズムを酸塩基反応および反応速度論に立脚して調べ、イオン液体中で特有な反応特性およびその制御法について知見を得た。 イオン液体中におけるTetraPEG反応末端(NH2基)の酸塩基性を調べたところ、IL中ではNH2基がより強い塩基として働くこと、その酸解離定数, pKaは16.4と水溶液中での値(10.2)とは大きくことがわかった。また、解離性のプロトンを持たない溶媒IL中にプロトン性イオン液体および適切な共役塩基を共存させることで、IL中にpH緩衝効果を発現させることに成功した。これにより、TetraPEGゲル化反応の素反応となる反応末端の酸塩基反応を精密に制御することが可能となり、結果として、架橋反応率が95%以上という理想均一網目を有するイオンゲルを作成することに成功した。pH緩衝イオン液体中において、TetraPEGゲル化反応を反応速度論的に調べたところ、高分子の架橋反応であるにも関わらず単純な二次反応でゲル化が進行すること、そのゲル化反応速度定数はハイドロゲル系と比べて2桁小さいことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時の計画通り研究を進めることができており、特に、初年度の中心課題である「イオン液体中における多分岐高分子のゲル化過程解明」については十分な成果が得られた。それはの成果はすでに学術雑誌(国際誌)へ論文投稿、掲載に至っている。また、二酸化炭素分離膜としての特性評価にもすでに着手しており、その成果の一部は速報誌として論文発表に至っている。H28年度は研究の軸をイオンゲル分離膜へとシフトさせ、これまでに得られているイオンゲルの物性・構造との相関関係を明確にしていく。
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今後の研究の推進方策 |
上述の通り、H27年度の研究では、イオン液体中における(1)pH緩衝効果および(2)これを利用したゲル化反応精密制御の方法論を確立し、ゲル化条件(高分子濃度、ゲル化時間、IL中でpH緩衝効果を発現する共役塩基の種類・組成など)の最適化を溶液化学の枠組みで実現できつつある。ゲル化反応の最適化は、得られるイオンゲルの力学特性および高分子網目均一生と直結するため、二酸化炭素分離膜の特性(分離能、溶媒保持能、耐久性)にも連動してくると考えられる。ガス分離膜として最適なイオンゲルの反応条件を見出し、それがイオンゲルの物性や網目構造とどのように関係しているのかに焦点を当て、研究を進めていく。
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