本研究は、4分岐ポリエチレングリコール(TetraPEG)を非水系イオン液体中で高効率で反応させる方法論を確立し、得られた均一網目構造を有する高強度・高靱性イオンゲルをガス分離膜として応用することを目的とした。具体的には、1. イオン液体中における高分子反応末端基の酸塩基平衡とゲル化反応メカニズム、2. 得られたTetraPEGイオンゲル膜の力学特性、3. CO2ガスの吸収・分離実験、について検討を行った。 TetraPEG反応末端(アミノ基)といくつかの中性分子(共役塩基)の酸解離定数をイオン液体中で直接決定した。この研究を通じて、イオン液体中にpH緩衝効果を発現させた「pH緩衝イオン液体」の概念構築に至り、これを利用することで末端交差反応(ゲル化反応)をほぼ100%の効率で進行させることに成功した。このpH緩衝イオン液体中におけるゲル化反応過程を反応速度論的に調べ、決定したゲル化反応の速度定数および活性化パラメータから、ゲル化メカニズムを分子レベルで明らかにすることができた。得られたTetraPEGイオンゲルは極めて低い高分子濃度(5wt%以下)にも関わらず延伸倍率5倍以上、人工関節に匹敵する高い機械的強度を示すことが分かった。このイオンゲルを用いてCO2吸収実験を行ったところ、速やかにCO2を 吸収し平衡状態に達すること、5MPaという高いガス圧で吸収実験を行ってもゲルが破損すること無く体積膨張すること、など吸収・分離材料として高い性能を示すことが明らかとなった。今後は、このTetraPEGイオンゲルの薄膜化に関する検討を進め、実用レベルのガス分離膜としての応用研究を進めていく。
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