研究課題/領域番号 |
15K17878
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
石松 亮一 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90512781)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | カーボンナノドット / 蛍光 / 電気化学発光 / フローインジェクション |
研究実績の概要 |
カーボンナノドットを抗体や抗原に化学修飾し、カーボンナノドットからの蛍光および電気化学発光を用いるフローイムノアッセイ系の構築を目的としている。H27年度は、カーボンナノドットの光物性、電気化学特性について検討を行った。カーボンナノドットはクエン酸とエチレンジアミンを溶解させた水溶液にマイクロ波を照射することによって合成した。カーボンナノドットを分散させた水溶液では、355 nmに吸収極大を、460 nmに蛍光極大を示した。また、蛍光寿命を測定したところ、蛍光減衰曲線は指数関数でフィットでき、その寿命は16 ns程度であった。カーボンナノドット水溶液をPDMSで作製したマイクロチップ(深さ~500μm、幅~2 mm)に注入し、フローインジェクション蛍光応答を測定したところ、5~100 ppmの範囲で良好な曲線関係が得られた。 電気化学特性を明らかにするために、サイクリックボルタモグラムを測定した。測定にはグラッシーカーボン電極を作用極に、白金コイルを対極に、銀|塩化銀電極を参照極に用いる3電極式を採用した。カーボンナノドット水溶液のサイクリックボルタモグラムでは、-1.4 Vと0.9 V付近にそれぞれ還元と酸化のピークが観察された。これらの還元および酸化波は非可逆的であった。即ちカーボンナノドットの酸化体、および還元体は不安定であることがわかる。非可逆的な電極反応は電気化学発光に不利である。なぜならば酸化還元種の寿命が短い場合、効率よく励起状態を生成できないからである。そこで、共反応体を用いる電気化学発光法に着目した。共反応体として、ペルオキソ2硫酸を用いて還元側に電位掃引を行うと、ペルオキソ2硫酸の還元が開始する-1 V付近からカーボンナノドットに由来する発光が観察された。 今後はカーボンナノドットを抗体や抗原に化学修飾し、フローインジェクション分析への応用を試みる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の予定として、合成したカーボンナノドットの光物性や電気化学特性の解明を目的としており、この目的は達成されている。今後この知見を生かし、フローインジェクションイムノアッセイ分析の応用を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
H28年度は、カーボンナノドットを抗体あるいは抗原に化学的に修飾し、マイクロチップ上で蛍光及び電気化学発光フローイムノアッセイを行う。カーボンナノドットの化学修飾にはアミノカップリング法を用いる。これは、カーボンナノドットの表面にアミノ基やカルボキシ基が存在することを利用する。抗原にはストレスマーカーであるイムノグロブリンAや数種類の農薬や殺虫剤を用いる予定である。実サンプル(唾液や環境水等)への応用も検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費では、高価な抗体や抗原の購入を抑えた。これは、カーボンナノドットを用いるフローイムノアッセイののモデル系を構築するにあたり、特に必要ではなかったからである。実際のサンプルへ応用が可能であることを示すために、これらの購入は、実験の進捗状況に合わせて、H28年度に行う。また購入を予定したマイクロピペット作製用のプラー(約40万円)の購入は、H27年度に納入が間に合わなかったため、H28年度に予定している。
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次年度使用額の使用計画 |
H27年度に生じた繰り越し分は、H28年度に高価な消耗品(抗体や抗原、電極等)に適切に使用する。ピペットプラーの購入(約40万円)を行う。
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