PDMSチップ上で、3-phenoxybenzoic acid (3PBA)-カーボンナノドットコンジュゲートのフローイムノアッセイを行った。PDMSチップはY字の流路を持ち、その深さは650 、幅は1000マイクロメートル程度であった。2つのシリンジポンプから送液を行い、一方のシリンジより、5000 ppmの抗体を注入し、他方より1000 ppmの3PBA-カーボンナノドットコンジュゲートを注入した。キャリア溶液にはpH=7.1のリン酸緩衝液を用いた。この時、345 nmの主波長を持つLEDをPDMSの背面から照射し、発生する蛍光をチャンネル上方に設置したPMTを使って検出した。注入後にベースラインの蛍光強度の増加が観察された。これは即ち3PBAカーボンナノドットコンジュゲートが抗体に捕捉されていることを示す。蛍光強度変化から、100 ppm程度のジフェニルエーテルの検出が可能であると見積もられる。また、PDMSに抗体を固定化していない場合に3PBAカーボンナノドットコンジュゲートを注入してもベースラインの増加はほとんど観察されず、PDMS表面へ特異的に吸着しない。これはカーボンナノドットが親水性であることが一因と考えられる。さらに、コンジュゲートが補足された後、pH=2.2のグリシン塩酸塩を解離剤として注入することにより、ベースラインの蛍光強度の減少が観察された。即ち、解離剤を注入することによって、測定系の再生が可能である。さらに、検出系に電気化学応答、電気化学発光応答を検討したが、どちらも応答が小さく、蛍光法による検出がこれらの検出法で高感度であることが分かった。
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