研究課題/領域番号 |
15K17883
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
勝田 陽介 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 研究員 (50632460)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | RNA G-quadruplex / スクリーニング / タンパク質翻訳反応制御 / 核酸 |
研究実績の概要 |
研究代表者はRNA G-quadruplexに対して親和性のある新たな化合物骨格を探索するための大規模スクリーニング系を考案し、RNA G-quadruplex に結合する化合物RGB-1 を見出すことに成功していた。平成27年度においてはこのRGB-1の物性を物理学的な性質を評価し、タンパク質翻訳反応の制御を行う事を目的としていた。 物理学的な性質評価の結果をまとめると、RGB-1のRNA G-quadrulexに対する結合定数は5.9micro-Mであり、CDスペクトルを用いた核酸の熱安定性評価によりRNA G-quadruplexに対して非常に高い選択性を持っていることが明らかになった。 タンパク質翻訳反応制御に関しては、無細胞系タンパク質翻訳システム、及び、細胞を用いたレポーターアッセイにより評価した。いずれの場合においてもRGB-1は約50%のタンパク質翻訳阻害効果を示し、細胞内においても化合物の機能を発揮させることができるという事を明らかにした。 以上の結果は、細胞の内在性タンパク質発現制御への利用応用の可能性を示すには十分であったことから、RNA G-quadruplexを形成することが知られているNRASの発現制御を評価した。すると、予想に反して5’-UTR領域において2つのRNA G-quadruplex構造を形成していることを見出すことに成功した。 以上をまとめ論文に投稿するに至っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度においてはRGB-1の物性評価、生体内RNA G-quadruplexの翻訳制御を計画していた。我々は翻訳制御の評価を行う際に、細胞膜透過性や細胞内局在といった様々な問題に直面することを予想していた。しかし実際にはこれらの問題が発生することはなく、スクリーニングのヒット化合物であるRGB-1をそのまま用いることができた。 更に当初より予定していたタンパク質翻訳反応制御の評価の際に、今まで見出すことが出来なかった新規RNA G-quadruplex構造を発見することにも成功した。本検討事項は平成28年度の研究計画も含んでおり当初の計画以上に進行したと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
研究代表者はすでに今まで知られていなかったRNA G-quadruplexを見出すことに成功している。そこで平成29年度に計画している生体内RNA G-quadruplexの網羅的な検索を前倒しして展開する。具体的な方法としてはプロテインディテクションアレイを予定している。つまりRGB-1の存在下でタンパク質翻訳に影響が出た遺伝子はRNA G-qudruplexを有している可能性がある。これらに関して、神経細胞など細胞の局在化といった顕著なフェノタイプがでるものを優先的にピックアップし、詳細な検討を進めることを予定している。
|