研究課題
現在、RNA G-quadruplexの位置を同定する方法として、RNAの配列情報を基にコンピューターを用いた熱力学的な高次構造予測を行い、RNA G-quadruplexをもつ遺伝子にあたりをつけて精査していくという流れが主流である。しかし、構造予測から外れたmRNAは、RNA G-quadruplexの存在が埋もれてしまったままとなり見逃されてしまうことになる。このような背景から、申請者は小分子化合物を利用して、実験的にRNA G-quadruplexを探索する研究を計画している。本研究申請(H.28年度計画)においては、化合物ライブラリーのスクリーニングから見出したRNA G-quadruplexを安定化する小分子化合物(RGB-1)を用いて、生細胞内タンパク質翻訳反応制御の達成を予定していた。以下は達成した範囲に関して記す。本研究計画に従い、まずin vitro系において検討を進めたところRGB-1は20 micro-Mにおいて約40%程度のタンパク質翻訳効果を示し、さらに細胞を用いた検討においても同程度の翻訳抑制活性を示した。以上より、RGB-1が細胞内においてもRNA G-quadruplexを標的にタンパク質翻訳抑制活性を示すことが明らかになった。最後にRNA G-quadruplexを有していることが知られている内在性NRASを対象に、ウエスタンブロットによりタンパク質発現量の評価を行い、RGB-1存在下において内在性NRAS発現量の低下を確認することに成功した。また、RGB-1の標的がRNA G-quadruplexであることを確認するため、円偏光二色性の強度を測定しNRAS RNAの融解温度(Tm)の評価を行ったところ、RGB-1の存在下で顕著なTmの上昇を確認することが出来た。また、NRAS 5’-UTRをレポーター遺伝子の上流に組み込み、レポーターアッセイしたところ、今まで知られていた位置以外のところでRNA G-quadruplexが形成されていることが明らかになった。以上を論文及び学会に報告した。
1: 当初の計画以上に進展している
平成29年度実施予定にしていた検討に関してもほぼ終了しつつある。詳細なデータを詰めることにより論文発表を行うことが出来る段階まで来ており当初計画していたペース以上の結果を得ることが出来ていると考えている。
平成29年度に関しては以下のように研究計画を立てている。H28年度に終了してしまった点が数点ある以外には大きな変更点はない。1.抗体アレイによりヒットした遺伝子に対してストップアッセイを展開することにより、具体的なRNA G-quadruplexの場所を同定する。2.同定したRNA G-quadruplexの場所を参考にしてin vitro translationを実施し、翻訳に関係している機能を持ったRNA G-quadruplexか否かを評価する。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件)
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