研究実績の概要 |
核酸の標準構造は二重鎖構造だが、機能を果たす上では、三重鎖や四重鎖などの非標準構造形成の重要性が近年示されている。特に、四重鎖構造による遺伝子発現過程の制御の報告が相次ぎ、種々の疾患発症と核酸構造の関連が議論され始めている。本研究では、任意の遺伝子に対してのみ分子間四重鎖を形成させる修飾オリゴ核酸を開発し、それを用いた人為的な遺伝子発現の制御技術の構築を目指した。 昨年度は、グアニンで構成される四重鎖(G四重鎖)において、標的核酸と特異的に四重鎖形成できる修飾オリゴ核酸として、キサントシン(X)と8-オキソグアニン(O)を含む分子内人工G四重鎖を構築した。また、シトシン(C)で構成される四重鎖(C四重鎖)では、ループの塩基配列が及ぼすその熱安定性への影響を明らかにした。 そこで本年度は、XとOを用いたG四重鎖に対する溶媒環境効果の解明、XとOを含む分子間G四重鎖形成による標的核酸の遺伝子発現制御、修飾Cを用いた分子間C四重鎖の安定化について研究した。 まず、XとOを含む分子内人工G四重鎖を用いて、金属イオンとG四重鎖のトポロジーに関する熱安定性への効果を明らかにした。その結果、トポロジーの違いにより金属イオンの選択性が全く異なることを実証した(J. Inorg. Biochem., 166, 190-198(2017))。 次に、XとOの配列を適切に設計し、狙った配列のみ分子間人工四重鎖を形成させ、遺伝子発現の制御を試みた。その結果、標的配列の特異的な四重鎖形成に成功し、その遺伝子発現制御能を確認した(論文発表なし)。 最後に、分子間C四重鎖形成による遺伝子発現制御が、修飾によるC四重鎖の安定化で可能か検証した。その結果、5-メトキシCの導入により、C四重鎖が安定化することが明らかとなった。しかし、遺伝子発現制御のためには、更なる安定化が必要なこともわかった(論文発表なし)。
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