研究課題/領域番号 |
15K17889
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
山口 拓実 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 准教授 (60522430)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 糖鎖 / NMR / 分子シミュレーション / ダイナミクス / 立体構造解析 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、酵母変異株を用いた高マンノース型糖鎖の大量調製法と化学-酵素合成法を組み合わせ、均一または選択的に安定同位体標識を施したモノグルコシル化糖鎖G1M9の調製法を確立し、そのNMR立体構造解析を実施した。 糖タンパク質のフォールディングには、G1M9糖鎖が重要であることが見出されている。小胞体内で糖タンパク質のフォールディング状態が不全なタンパク質の存在を感知してそれに糖鎖非還元末端のグルコース残基を付ける酵素であるUDP-グルコース糖タンパク質グルコース転移酵素(UGGT)を活用して、安定同位体標識を施したG1M9糖鎖を作出する方法論を開発した。 高マンノース型糖鎖を均一に発現する変異酵母を同位体標識グルコースを炭素源として含む培地で培養することによって、糖タンパク質を均一に標識した。得られた糖タンパク質を基質とし、別途化学合成したUDP-[13C6]グルコースを用いてUGGTによる糖転移反応を行い、モノグルコシル化高マンノース型糖鎖G1M9を調製することに成功した。また、糖タンパク質を分解へと促す酵素グルコシダーゼⅡに関して分子運命決定に関わる構造基盤を求めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
安定同位体標識を施したシャペロン認識糖鎖を作出する方法論を開発し、詳細なNMR構造解析を行う道筋をつけることができた。得られた研究成果について国際誌に発表している。また、調製した糖鎖について、既に多次元NMR計測と分子動力学シミュレーションによる解析に着手している。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、精密実験データに裏付けられた分子シミュレーションを通じて得られる構造基盤に基づき、糖タンパク質の正しい立体構造形成を促したり、不要となった糖タンパク質を分解するための暗号となる糖鎖動態を描象する。特に、不要となった糖タンパク質を分解するための暗号となる糖鎖動態を描像し、タンパク質の運命決定を司っている糖鎖の作動機構解明を目指す。さらに、一連の酵素およびレクチンとの相互作用解析を実施し、糖鎖上へのタンパク質運命情報をコードし、読み解くメカニズムを明らかにする。
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