研究課題/領域番号 |
15K17892
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研究機関 | 富山高等専門学校 |
研究代表者 |
森 康貴 富山高等専門学校, 物質化学工学科, 准教授 (90734294)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 銀ナノ粒子 / 粒径制御 / ガラス / 表面反応 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、有害物質の使用及び排出を伴わずに容易な粒径制御ができる銀ナノ粒子合成系において、粒子生成反応を詳細に検討し、その粒子生成・成長プロセスの解明を目指すものである。本系における銀ナノ粒子の合成は、銀含有ガラス粉末をグルコース水溶液中に分散させ、これを加熱することで実施する。市販品の銀含有ガラス粉末を用いて銀ナノ粒子合成反応の検討を行った平成27年度に続き、平成28年度では、実験室スケールで様々な組成の銀含有ガラス粉末を合成し、ガラスの組成が銀ナノ粒子の生成に与える影響を検討した。 本研究で用いた銀含有ガラス粉末は、酸化ほう素、二酸化ケイ素、酸化ナトリウム及び酸化銀の4成分系であり、ほう酸、ほう砂、二酸化ケイ素、炭酸ナトリウム及び硝酸銀を原料として溶融法(1000℃)により合成、遊星ボールミルを用いて粒径約1μmに粉砕して作製した。 ガラス組成の影響の検討は、酸化銀の組成(1wt%)に加え、酸化ナトリウム(15wt%)または二酸化ケイ素(25wt%)の組成を固定し、他の2成分の組成を変化させ、反応温度95℃、グルコース濃度2wt%の条件で銀ナノ粒子を合成することで行った。その結果、酸化ナトリウムの組成を固定した系では、酸化ほう素の組成が増加するにつれて反応速度が遅くなる傾向が観察されたが、生成される銀ナノ粒子の粒径はいずれの組成においても9 nm付近であり、ガラス組成の相関は観察されなかった。一方で二酸化ケイ素の組成を固定した系では、酸化ほう素の組成が44wt%から69wt%まで増加するにつれて粒径が5~20 nmの範囲で増加したが、反応速度との相関は認められなかった。 以上の結果より、反応液中のグルコース濃度に加えて、銀含有ガラス中の酸化ナトリウムの組成が銀ナノ粒子の粒径制御に影響を与えることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画のとおり、組成の異なる銀含有ガラスの合成手法を確立するとともに、これを用いて様々な組成のガラスを用いた銀ナノ粒子合成反応の評価を行うことができた。この結果より、銀ナノ粒子の粒径制御の要因としては当初想定していた銀ナノ粒子生成速度よりもむしろガラス組成、特に酸化ナトリウムの組成の影響が大きいことが明らかとなった。その一方で、様々な組成の銀含有ガラスを用いた場合においても、反応系中に銀イオンが均一に存在する溶液における銀ナノ粒子の合成(反応速度の増加に伴い粒径が小さくなる)とは明確に異なる結果が得られた。このことは、従来どおり本系における銀ナノ粒子の生成が銀含有ガラスの内部またはその近傍にて進行していることを示唆するものであるが、銀ナノ粒子粒径制御のメカニズム解明のためにはより直接的にガラス表面の状態を観察する必要があると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度においては、銀含有ガラス表面における銀ナノ粒子生成について、より直接的に観察する方法を確立し、その評価を行うことを目標とする。現段階では、反応途中の銀含有ガラスの断面を透過型電子顕微鏡等により観察し、その分布と粒径の関係を評価することを想定している。また、強いアルカリ性を示す酸化ナトリウムの組成が銀ナノ粒子の粒径に影響を与えたことから、反応溶液のpHが銀ナノ粒子の粒径に与える影響も調査する。これらと並行して、銀以外の金属ナノ粒子(金を第一候補として想定)についても当該金属含有ガラス系にて合成を検討する。
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