研究実績の概要 |
昨年度の研究成果から、ポリヘドロン状超分子金属錯体は、光増感剤の存在下、優れた光水素発生触媒として機能することを明らかにしている。そこで本年度の研究では、昨年度に開発したポリヘドロン状超分子錯体の合成手法を参考に、光増感剤であるシクロメタレート型イリジウム錯体[Ir(ppy)2(bpy)]+ (ppy = 2-phenylpyridine, bpy = 2,2'-bipyridine) が骨格に含まれた四角形型金属錯体を開発し、光誘起分子内電子移動によって水の光還元による水素生成が可能であるかを調査した。まず初めに我々は、[Rh2Cl2(O2CCH3)2(dtBubpy)2] (錯体1: dtBubpy =4,4'-ditert-buthyl-2,2'-bipyridine)と[Ir(ppy)2(H2dcbpy)]+ (H2dcbpy =2,2'-bipyridine-4,4'-dicarboxylic acid)のカルボン酸交換反応により合成を試みたが、高温反応条件下においても、目的の四角形構造体を得ることができなかった。そこで次に、錯体1とH2dcbpyを反応させる事で、光増感剤を含まない四角形構造体を初めに合成し、その錯体に[Ir(ppy)2Cl]2を後から反応させる事で目的の光増感剤を骨格に有する構造体を得ることに成功した。得られた錯体は、NMRおよび元素分析から純粋物質が生成できていることを確認できている。単結晶に関しては、現在作成中である。また、本金属錯体は、犠牲材の存在下で水素を発生する事が可能であることを確認できた。
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