研究課題/領域番号 |
15K17900
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
志津 功將 京都大学, 化学研究所, 助教 (10621138)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 有機EL / 輻射失活 / 無輻射失活 / 重なり密度 / 振電相互作用 / 相互作用密度 / Stokesシフト / Davydov分裂 |
研究実績の概要 |
高い発光効率・色純度・耐久性を有する純青色の有機発光材料の実現は、有機ELを基盤とした固体白色照明やフレキシブルディスプレイを開発する上で解決しなければならない重要な課題である。本研究の目的の1つは、理論化学手法を用いて、高い発光効率・色純度・耐久性を兼ね備えた青色発光材料を開発するための分子設計指針を確立することである。本年度は、高い発光効率を実現するための分子設計指針の確立を目的とした理論研究を実施した。 輻射失活(蛍光)の速度(kr)と無輻射失活(熱失活)の速度(knr)がともに励起1重項状態と基底状態間の電子波動関数の重なり密度を用いて表されることに着目し、有機ELに用いられる蛍光材料について、重なり密度の分布と発光効率との相関を調べた。その結果、重なり密度の分布を分子の座標中心から遠ざけるように分子構造を改変することで、knrの増大を抑制しながら、krを選択的に増大させられることを見出した。ここで得られた重なり密度の分布に基づく分子設計指針は、高いEL発光効率を示す発光材料の探索に有効である。 熱活性化型遅延蛍光(TADF)材料は100%の効率で電気を光に変換できるという特長を持つことから、次世代のEL材料として注目されている。分子の対称性と発光効率との相関を調べるため、ドナー-アクセプター(D-A)型構造とドナー-アクセプター-ドナー(D-A-D)型構造を持つTADF材料について、krとknrを計算し、比較した。その結果、knrの大きさが両者でほぼ同等であるのとは対照的に、krの大きさはD-A-D型構造の方が大きくなることがわかった。理論解析の結果、対称的なD-A-D型構造が重なり密度の分布領域を拡大させ、krの増大に寄与していることがわかった。この結果から、TADF材料の発光効率の向上には、対称的な分子構造の構築が有効であることが示唆される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に実施した研究によって、高い発光効率を実現するための分子設計指針が確立されたことから、研究はおおむね順調に進展しているといえる。成果の一部は国内ならびに海外の学会にて発表し、現在、論文投稿中である。
|
今後の研究の推進方策 |
色純度と耐久性の向上を実現するための分子設計指針の確立を目指す。得られた分子設計指針に基づいて、高い発光効率・色純度・耐久性を有する青色蛍光材料の開発に取り組む予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
材料合成を次年度に繰り越したため、次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
材料合成のための試薬類の購入、論文誌投稿料、国内ならびに海外での学会発表のための旅費として使用する予定である。
|