研究課題
燃料電池の電極やガス分離貯蔵材料などの環境・エネルギー材料開発において、材料内部を拡散するガス分子運動の分光学的分析は重要である。本研究の目標は、酸素、水素、一酸化炭素、二酸化炭素などのガス分子の核磁気共鳴(NMR)の検出感度を劇的に上昇させることである。金属イオンと有機配位子が自己集合で組み上がる多孔性配位高分子の細孔にガス分子を固定化し、予め細孔内に取り込んだ超偏極源から超偏極をガス分子に転写することに取り組んでいる。平成28年度は、ランタンイオンと1,3,5-benzenetrisbenzoate(BTB)から組み上がる多孔性配位高分子(LaBTB)にペンタセンを含ませた試料に対して、超偏極実験を行った。レーザの周波数、強度等の条件を変えながら実験を行ったが、超偏極スペクトルを得ることはできなかった。他にも、亜鉛イオンと2,5-dioxidoterephthalateから組み上がる多孔性配位高分子(MOF-74)等にペンタセンを内包させ、超偏極実験を行ったがうまくいかなかった。空隙内部に存在する微量な酸素が、緩和時間を短くしており、効率よく系内で超偏極が拡散していないことが予想される。異なる方法として、ペンタセンをドープした安息香酸を予め超偏極をさせ、その安息香酸を空隙に導入する試みを行った。結果、超偏極を示唆する巨大なNMRピークが確認できた。空隙内部に超偏極させた安息香酸が導入できたことを示唆している。研究目標に挙げていた気体分子の超偏極に至らなかったが、多孔性配位高分子の空隙内部に超偏極分子を導入することに成功した。今後は、その超偏極を気体分子に移す事で、目標を達成できると考えている。
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Journal of the American Chemical Society
巻: 138 ページ: 8505, 8511
10.1021/jacs.6b03625