研究実績の概要 |
前年度検討したクリック反応による修飾ポリマー鎖末端のカルボキシル化は分析が困難であった事から、今年度は別のアプローチ法として、表面開始原子移動ラジカル重合 (SI-ATRP) 法を用いた層状ペロブスカイトHLaNb2O7・xH2O (HLN)の層間重合により、N-isopropylacrylamide (NIPAAm) と金属配位性モノマー(N,N-dicarbonylmethyl)aminomethylstyrene (DCAS) から構成される温度応答性コポリマーを修飾したHLNナノシートの合成を検討した。この修飾ナノシートを用い、温度変化に伴う相転移挙動やDCAS残基への金属配位性、固定化金属イオンへのタンパク質のアクセス性制御を評価した。 HLN層間重合において、過去に報告した手法ではDCASの嵩高さによって層間重合が進行しなかった。そこで、新たに合成した嵩高いSI-ATRP開始基を有するホスホン酸をHLN層間表面に修飾する事で、層間重合による温度応答性コポリマー修飾HLNを作製できた。得られた試料は、IR測定よりコポリマー由来の有機基を確認し、AFM観察より厚さ20 nm程度のナノシート構造が観察された。 修飾ナノシート水分散媒は、UV-visによる吸光度が23℃付近から急激に低下した事から、温度変化に伴う相転移が確認できた。修飾ナノシートへの二価Cuイオン吸着量はICP測定より0.18 mmol/gと算出され、修飾ナノシートの金属イオン配位能が示された。二価Cuイオンを配位させた修飾ナノシートを用い、ウシ血清アルブミン (BSA) の吸脱着試験を検討したところ、再現性のある結果が得られなかった。定量で用いたMicro-BCA法において、SI-ATRPで極微量に残存したCuイオンが検出されたことが原因と考えられ、タンパク質定量法の再検討が必要である事が分かった。
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