複数種のケイ素アルコキシドを前駆体に用いて得られる、高い圧縮・曲げ柔軟性を特徴にもつシリコーン組成のマクロ多孔体(マシュマロゲル)に関する研究においては、前年度に引き続き立体細胞培地への応用を主目標として取り組んだ。立体培地として用いるためには細孔構造の改良が必要であることが判明したが、目的にあう構造の作製法を年度内にみつけることはできなかった。今後も引き続き追究していく必要がある。細胞工学への応用に関して、他の発展方向性もいくつか見出すことができた。(未発表ではあるが)一例として、マシュマロゲルの微細構造を用いた高効率のリポソーム(ベシクル)を作製法が挙げられる。マシュマロゲルの細孔や表面の特徴を最大限に生かした用途であり、他社への技術移転も容易であるため、今後広く用いられていくことが期待できる。 平行して取り組んでいるコア―シェル型骨格構造をもつモノリス型柔軟マクロ構造体の研究については、合成法や物性に関するデータをまとめて論文発表した他、骨格中心に用いるナノファイバー・被覆に用いるケイ素アルコキシドのさまざまな組み合わせを試すことで系の拡大を目指した。最初期より行っていた組成が力学強度など諸物性においてバランス的に好ましいという最終結果に落ち着いてしまったが、試行錯誤の中で組成・反応条件と物性における関係性の特徴を掴むことができた。このモノリス型多孔体を歩留まりよく作製するために行った、ナノファイバー分散に関する研究においても新たな知見を得ることができた。当初の計画にはなかったが、これまでほとんど報告がない超低密度透明多孔体(エアロゲル状のクライオゲル)を真空凍結乾燥で簡便に作製できるようになったことは、本研究課題からうまく派生した副次的成果といえる。
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