従来の無機材料の多くは陽イオンの組合せで様々な物性を制御し、実用化してきた。複合アニオン化合物の一つである金属酸窒化物は、酸化物イオンと窒化物イオンの組合せで物性を制御できる可能性を持つ。これまでに、ペロブスカイト型酸窒化物SrTaO2Nの焼結体を作製し、その優れた誘電性を明らかにしてきた。本研究では、ペロブスカイト型酸窒化物誘電体における酸化物イオンと窒化物イオンの配列がその誘電性に与える影響を明らかにすることを目的とした。平成27年度は、①酸素窒素比率と誘電性の関係を明らかにすることを目的に、ペロブスカイト型構造のLa1-xSrxTiO2+xN1-x固溶体酸窒化物を作製し、その誘電率と結晶構造の関係を評価した。固溶体とすることで低融点パラフィンとの複合体から見積もった誘電率は増加したが、中性子回折からは酸素窒素のシス型配列が維持されることが分かった。一方で、固溶体化することで、構造の歪みが減少し八面体鎖の傾きの低下が高い誘電率に関係すると考えられた。平成28年度は、②様々なペロブスカイト型酸窒化物の合成法を検討することで酸素窒素配列を制御する手法を開発することを目的とし、炭素や窒化炭素C3N4を用いた酸窒化物の新しい合成手法を開発した。特に窒化炭素を用いた合成手法は従来のアンモニアガスを用いた手法よりもおよそ200℃低い800℃で酸窒化物を合成できた。これは、原料酸化物がC3N4と反応し、シアン化物などの高活性な反応中間体を形成するためと考えられる。粉末X線回折を用いた構造評価ではc/a軸比の変化が観察されており、中性子回折などを用いたより詳細な構造評価を実施する予定である。窒化炭素を用いた新規合成手法に関して投稿論文の準備中である。
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