研究実績の概要 |
固体酸化物形燃料電池の酸素還元反応の大幅な過電圧低減を目指して、新規なカソード触媒の開発に取り組んだ。 本年度は、酸素還元の活性向上に効果のあるABO3/A2BO4ヘテロ界面系の探索を目的として、電子-酸化物イオン混合伝導性を有する(Sm,Sr)CoO3に着目し、その関連化合物である(Sm,Sr)2CoO4と形成するヘテロ界面が空気極性能に与える影響を評価した。(Sm,Sr)CoO3と(Sm,Sr)2CoO4の混合比が異なる(Sr,Sm)CoO3/(Sr,Sm)2CoO4系電極を用いて対称セルを作製し、界面導電率を比較したところ、(Sm,Sr)CoO3:(Sm,Sr)2CoO4 = 80:20 wt.%の電極が最も高い性能を示した。また、閉鎖循環系装置内で同位体酸素交換実験を行い、各電極の表面交換反応係数(k)およびバルク拡散係数(D)を算出した。その結果、(Sm,Sr)CoO3単体よりも上述の電極((Sm,Sr)CoO3:(Sm,Sr)2CoO4 = 80:20 wt.%)の方がk値が大きく、ヘテロ界面の導入により酸素表面交換反応が促進されていることが明らかとなった。一方で複合体電極ではD値が減少しており、(Sm,Sr)2CoO4相により酸化物イオンのバルク拡散が阻害されていることが示された。以上の結果から、適切な混合比でヘテロ界面を導入することで、酸素表面交換反応を促し、電極反応過電圧を低減することが本系でも可能であることを明らかにした。 また、電極系内にペロブスカイト類似構造とペロブスカイト型構造の二相共存状態をつくることを目的として、PrBaFe2O6(ABO3型)/PrBaFe2O5+δ (AA’B2O5+δ型)系の検討に着手した。
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