固体酸化物形燃料電池の酸素還元反応の大幅な過電圧低減を目指して、新規カソード触媒の開発に取り組んだ。多様な構造や形態を取ることが可能なペロブスカイト類似構造を有する複合酸化物の一群に着目し、異なる結晶構造を有する化合物の混合電極を作製した。 本年度は、電極系内にシングルペロブスカイト型構造とAサイト秩序型層状ダブルペロブスカイト構造との二相共存状態をつくることを目的として、ABO3型/AA’B2O5+δ型ヘテロ界面系を検討した。PrBaCo2O5+δは優れた酸化物イオン-電子混合導電材料として報告されているが、電解質との熱膨張係数の差が大きく実用には適さないので、BサイトにFeを用いるPrBaFe2O5+δ系に着目した。従来の作製法ではこの結晶構造を有する材料を作製することはできなかったが、適切な熱処理を加える新たな作製法を確立した。PrBaFe2O5+δの導電率は、シングルペロブスカイト型構造を有するPrBaFe2O6と比較して高い値を示したが、PrBaCo2O5+δよりも1桁以上低い値であった。そこで、導電率向上と熱膨張係数の両立を目的としてBサイトのCo部分置換を検討したが、ダブルペロブスカイト構造が安定に存在できる置換領域は狭く、実用に資する導電率を有するABO3/AA’B2O5+δヘテロ界面系を構築することは困難であった。一方で昨年度に実施したABO3型/A2BO4型ヘテロ界面系の検討において、ヘテロ界面では酸素の表面交換反応が促進されることを明らかにしている。このことは、適切な混合比でヘテロ界面を導入することで、酸素表面交換反応を促し、電極過電圧を低減することが可能であることを示唆している。したがって、ABO3型/AA’B2O5+δ型ヘテロ界面系であっても、適切な導電率を有する材料系を開発・適応できれば、電極性能の向上は十分可能である。
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