再生医療への実現には、増殖因子・細胞・足場(スキャホールド)の三つが必要で、材料の立場からは細胞活動に適した足場の研究をすすめる必要がある。培養で用いた細胞や細胞がつくりだした組織等と一緒にスキャホールドを生体内へ入れることができれば理想的である。このことから、骨に関する再生医療の材料候補としては、生体骨の無機主成分である水酸アパタイト(HA)が有用である。現在、細胞試験に用いられているHAは不透明であり、細胞試験において非常に重要な生きた細胞を用いた観察や評価検討をすることができていない。申請者等はHAの透明な焼結体を作製することで、生きた細胞による細胞挙動の検討ができること、また、ち密体であることから気孔率等の材料形状の影響を一定とできること、を報告してきた。しかし、HA透明焼結体の作製には、熱間等方加圧成形や放電プラズマ焼結などの特殊な装置が必要である。 以上から、本研究では微粒子合成や得られたHA粒子の微細化、有機物との複合化等により、簡易にHAの透明体を作製することを試みた。 29年度は、HA透明体を作製するために、HA粒子の粒子径やゼータ電位を検討することを試みた。分散剤・温度・濃度・pH・分散処理等の種々の条件を検討することで、凝集していたマイクロオーダーの粒子径を、ナノサイズまで分散させることができた。この分散条件を用いて得られた粒子について、乾燥の条件(温度・時間など)を検討することで、透明な成形体を作製することができた。得られたHA透明体を用いてMC3T3-E1細胞がHA透明成形体に接着し、増殖していることを確認した。
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