ナトリウムおよび硫黄を高含有する金属硫化物はナトリウム二次電池用の電極活物質として高い性能が期待できるが、これまでに物質探索が十分に行われていない。研究代表者らは、先行研究として大気非暴露でのメカノケミカル法によってリチウムを含有する硫化物の新結晶相を見出してきている。 本研究課題では、物質探索手法として大気非暴露下でのメカノケミカル合成を採用し、ナトリウム二次電池用の電極活物質として高性能が期待できる組成のナトリウム含有金属硫化物の新結晶相の創製を目指した。 チタン、ニオブ、ジルコニウム、スズの硫化物と硫化ナトリウムを、遊星型ボールミル装置を用いて室温付近で機械エネルギーを用いて反応させることで、新物質を探索した。ジルコニア系においては、Na2ZrS3組成で岩塩型の結晶相を有する材料が得られた。チタン系およびニオブ系においては、低結晶性または非晶質材料が得られた。いずれの元素においてもナトリウム系ではリチウム系に比べて導電率が低くなる傾向がみられたが、ニオブ系において、ニオブに対する硫黄の含有比率(S/Nb)が3程度の試料では、10 S cm-1を超える高い導電率を有するものも得られ、これがナトリウム電池用の電極材料として機能することを確認した。また、現状では単相組成や結晶構造が同定できていない新結晶相を含有する材料系も見出した。 比較用の実験として合成したリチウムスズ硫化物においても、新結晶相を有するリチウムイオン伝導性固体電解質を見出した。この固体電解質は、25℃で10-5 S cm-1を超える比較的高い導電率を示した。 今回、低結晶性材料、非晶質材料、複合材料を含む新規材料を発掘した。今後は得られた試料の電極や電解質性能の評価結果をフィードバックして高性能材料を探索する必要がある。
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