研究課題/領域番号 |
15K17922
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
桑原 純平 筑波大学, 数理物質系, 講師 (70466655)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 共役高分子 / 有機薄膜太陽電池 / 純度 / 分子量 / 直接アリール化 |
研究実績の概要 |
C-H結合の直接アリール化反応を利用した重縮合反応を用い、純度や分子量の異なる共役高分子を合成した。まずはモデル化合物として非晶性の共役高分子を設定し、Br末端の有無、Pdの残存量、分子量が異なる4種類サンプルを合成および同定した。得られた高分子のOFETにおける移動度や太陽電池特性を評価したところ、高分子の末端にBrが存在する場合には、特性が低いことが明らかとなった。その他のPdの残存や分子量に関しては、対象とした高分子においては大きな影響は観測されなかった。4種類のサンプルにおいて薄膜の形状や吸収スペクトルなどには違いは見られないことから、Brがキャリアの移動を阻害していることが特性低下の要因であると結論づけた。この研究から、あるモデルケースにおける結果に留まらず、純度や分子量などの各要素が特性に及ぼす影響の大小を比較する方法論を確立することができた。 次に、さらに高い特性発現が期待できる、広い吸収領域と高い結晶性を有する高分子の合成へと展開した。結晶性の高分子は溶解性が低いことから、重合中に析出することで円滑な重合反応が進行しない場合が多い。これに対して、トルエンを反応溶媒とする重合条件を適応することで、材料特性を評価するに十分な分子量の高分子を得ることが可能となった。さらに、得られた高分子の構造欠陥の有無を詳細に検証し、重合条件の最適化にフィードバックした。その成果として、反応溶媒と触媒を適切に組み合わせることによって、構造欠陥のない高分子を得ることが可能となった。引き続き、これまでに確立した評価系を基にして、太陽電池材料としての評価を中心に検討を継続している。特に、結晶性高分子における、末端の有無、Pd の残存量、分子量が特性に及ぼす影響を系統的に調査している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度に予定していた、アモルファスな高分子を対象とした検討が予定通り終了し、学術論文にて発表することができている。さらに、合成を検討していた二種類の結晶性高分子の合成手法も確立した。これらの成果から、本年度の目的を達成すると共に、次年度に結晶性高分子の特性を評価する準備が十分に行えたことから、順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
予定通り結晶性高分子の合成手法が確立できたことから、純度や分子量の異なるサンプルを系統的に合成していく。得られた高分子の純度や分子量が基礎物性に及ぼす影響を明確にした後に、太陽電池材料として評価する。一連の調査から、純度や分子量が及ぼす影響を明確にすることで、材料に求められる品質を明らかにする。さらに、求められる高品質な材料を簡便に提供可能にする方法論を明確にすることで、共役高分子材料の合成法として新たな指針を確立していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に計画していた非晶性高分子の合成と評価が想定よりも順調に進行し、試薬費およびガラス器具の購入費用を抑えることができた。
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次年度使用額の使用計画 |
結晶性の高分子の合成を開始したところ、多段階合成に想定していたよりも多くの試薬および精製に関る溶媒等を必要とすることが明らかとなった。次年度に持ち繰り越した予算は、遅延無く合成を進めるための試薬費等に使用する予定である。 また、太陽電池特性の評価や結晶性の評価のために、他機関の機器を使用する機会が多くなることが予想されることから、それらの使用料として利用する計画である。
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