芳香族モノマーの C-H 結合を反応点とする結合形成反応(直接アリール化反応)を利用した重縮合によって高分子材料を合成し、得られる材料の純度と太陽電池特性の相関を明らかにした。まず、有機薄膜太陽電池に適した材料を合成できる方法論の確立を行った。合成条件の検討により、構造欠陥なく高分子量体を得るためには、Pd(0)前駆体を利用すること、トルエンを溶媒とすることが重要であることを明らかにした。この知見を基に太陽電池に適したHOMO/LUMOレベルや広い吸収領域を有する高分子を合成した。純度の効果を知るために、まず文献にて太陽電池特性が報告されている高分子を対象として検討を行った。元素分析による評価において、炭素、水素、窒素の含有率の理論値と分析値の差異が0.4%以下場合には、文献値と同等以上の光電変換効率が得られることが明らかになった。一方で構造欠陥などが他の手法で認められない場合においても、元素分析値が0.4%の範囲内に収まらない場合には、変換効率が文献値を下回ることが明らかになった。この結果から、広く用いられている純度評価法である元素分析が、共役高分子材料の純度評価法として非常に有用であることを明らかにした。最終的に、昨年度までに確立した高分子の高純度化、本年度確立した材料の合成法、デバイス構造の最適化を組み合わせることで、最大で6.8%の光電変換効率を達成した。この値は過去に報告された同じ高分子の変換効率(5.2%)よりも有意に高い。 一連の結果から、直接アリール化重縮合を高度化することで、分子量および純度の観点で高い品質の材料を提供可能となった。さらに、高分子材料の純度は太陽電池特性に大きな影響を及ぼす本質的な要因であることを明らかにした。本研究で得られた合成手法および精製法を活かすことで、対象とする高分子の特性を最大限引き出すことが可能となった。
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