研究課題/領域番号 |
15K17928
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研究機関 | 一般財団法人日本自動車研究所 |
研究代表者 |
松田 智行 一般財団法人日本自動車研究所, その他部局等, 研究員 (90595696)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | リチウムイオン電池 / その場分析 / 劣化解析 |
研究実績の概要 |
電気自動車や定置用途でのリチウムイオン電池(LIB)における寿命についての関心の高まりから,詳細な劣化解析を行う必要性が増大している.LIBにおいて,温度と電流密度は劣化にとって重要なパラメータであるが,劣化との関係性についてその詳細は明らかになっているとはいえない.本研究では温度環境と電流密度がリチウムイオン電池電極反応およびその劣化に及ぼす影響を明らかにすることを目的としている. 平成27年度は温度可変環境の構築とその場観察可能な小型ラミネートセルの試作を行った.試作した小型ラミネートセルを用いて,恒温槽内と温度可変環境とで充放電試験を行ったところ,同様の充放電曲線が得られ,温度可変環境によりその場測定が可能であることを確認した.実際のその場測定については,放射光施設においてX線吸収微細構造測定(XAFS)を行う計画であったが,ビームタイムが確保できなかったことから実施できていない.また,実験室で実施可能なその場測定として,ラマンスペクトルのその場測定について検討を行った.測定を行うためには,現在試作している小型ラミネートセルよりも精度良く電極を対向させる必要があったことから,治具の設計を行っている.その他,その場分析用の試料電極種について検討を行い,当初計画していた電気自動車等での利用拡大が見込まれる三元系正極に加えて,表面変質による劣化が懸念されるニッケル系正極についてもその場分析を行うこととした.そこで,ニッケル系正極を使用している市販リチウムイオン電池についてサイクル寿命試験により劣化傾向およびその場測定に適した充放電条件の評価を進めている. 平成28年度は適切な電極を用いた小型ラミネートセルを作製し,開発した温度可変環境によってその場XAFS測定およびその場ラマンスペクトル測定による劣化解析を行う.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成27年度は放射光施設としてKEK-PFの利用を想定していたが,申請課題に対してのビームタイムの割り当てがなかったことから,その場XAFS測定を行うことができなかった.また,当初想定していたラミネートセル作製方法では,ラマンスペクトル測定が困難であったことから,新たにセル作製用の冶具の設計と作製が必要になった.以上のことから,当初予定していた実験を行うことができず,進捗としては遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は平成27年度に開発した測定環境を用いて,電流密度を変化させたその場測定を行うことで,劣化の温度/電流密度依存性を明らかにする.その場XAFS測定に関しては,平成28年度は一般課題での利用申請のほか,SPring-8の成果公開優先利用課題により,マシンタイムを確保して実験を行う.その場ラマンスペクトルについては作製する冶具を用いて測定用セルを作製し,実験を行う.試験には,初期状態の電極および劣化後の電極の両方を用いることで,劣化メカニズムを明らかにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度は放射光施設のビームタイム確保ができず,実験および得られた成果を発表するための出張旅費が不要になった.また,平成28年度のSPring-8優先課題利用予算を確保するために,計画していた海外出張をとりやめたため,次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
SPring-8での成果公開優先利用課題および通常課題によるその場XAFS測定を行うための施設利用料および旅費として使用する.そのほか,小型ラミネートセル作製のための冶具作製費および部材費として用いる計画である.
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