骨粗鬆症は骨強度が低下し骨折リスクが増大する疾患であり、大腿骨近位部や椎体の骨折が特に多い。これらの部位は海綿骨で構成されるため海綿骨強度を正確に評価することが重要となる。現在、骨強度は、骨密度(骨量、骨塩量)を用いて評価されているが、骨密度だけでは骨強度を予測できない例が多く報告されている。そのため、海綿骨の力学的特性の評価や制御には、骨密度の他に、海綿骨を構成する骨梁単体の力学的特性や骨代謝と関わる構造的要因を加味する必要がある。そこで本研究では、骨梁の力学的特性を明らかにし、マイクロ・ナノ構造が力学的特性に及ぼす影響を明らかにするために、(1)骨梁単体に特化した力学的特性計測方法の提案と計測、(2)断面観察およびX線回折による骨梁のマイクロ・ナノ構造特性計測を目的とした。2年計画のうち最終年度の今年度は、(1)骨梁の力学的特性計測及び(2)マイクロ・ナノ構造特性計測を行い、以下の成果を得た。(1)骨梁の力学的特性の計測方法として提案したMicro-cantilever Bendingについて、学術雑誌論文において成果公表を行なった。また、本手法により直径100-200μm、長さ0.5mm程度の骨梁まで計測可能であることを実験により確認した。ウシ大腿骨近位部海綿骨から採取した骨梁の弾性率は、長さ3mm、1mm、0.5mmを比較した結果、有意な差は認められなかった。(2)骨梁断面の光学顕微鏡観察の結果、断面内にラメラ構造が認められたが、弾性率との明確な対応は得られなかった。また、X線回折法により骨梁内のハイドロキシアパタイト結晶の配向性を計測した。その結果、ハイドロキシアパタイト結晶のc軸は、海綿骨内の骨梁配向に関わらず骨梁長軸方向に配向していることが明らかになった。また、その度合いは皮質骨よりも低かった。
|