研究課題/領域番号 |
15K17931
|
研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
趙 旭 秋田大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20650790)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 低温はんだ / Sn58Bi / 原子拡散 / エレクトロマイグレーション / Bi-rich層 / バックフロー / 臨界積 / 同時評価 |
研究実績の概要 |
本研究は、次世代低温はんだである共晶錫ビスマス(Sn58Bi、wt%)はんだを対象とし、長さが数十μmという極微小な二元共晶合金の高密度電流下原子拡散による損傷機構、即ちエレクトロマイグレーション(EM)損傷機構の解明と定量的評価、さらにはんだ接合信頼性向上対策の提案および金属回収への応用展開を目的とする。H27年度は、申請時に計画した研究を遂行し、以下の研究実績を得た。 1.従来のはんだEM研究の問題点を打開し、かつ評価効率に優れた試験片構造を新規に提案した。最小長さが50μmのはんだ接合を含め、異なる長さを有するSn58BiはんだのEM同時評価を行い、はんだの寸法減少によるEM挙動の変化を調査した。 2. はんだの寸法減少による接合界面近傍における信頼性問題の深刻化の有無を調査した。陽極側にBi-rich層の形成と共に局所的電気抵抗が上昇したが、金属間化合物層の成長が見られなかった。 3. Sn58Biはんだにおける自然酸化膜の存在によりバックフロー(EMと逆方向の原子流)が生じ、はんだのEM挙動は長さに依存することを見出した。さらに、EMによるBi原子流束のドリフト速度を測定することにより、EM損傷発生の臨界条件(はんだの臨界長さと電流密度の積)を明らかにした。これにより、任意長さのはんだに対してそのEM発生に必要な電流密度を計算できる。逆に、ある電流密度に対してEM損傷発生の臨界長さを推定することも可能であり、現在微細化の進んでいる電子デバイスの信頼性設計に大きく貢献する。 4. 高密度電流下SnとBi原子の拡散経路を追跡し、Sn58BiはんだのEM拡散機構を実験的に解明した。よりEM耐性の強いSnBi基低温はんだの組成設計の基盤を築いた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は当初の予定通り、新規試験片の提案、Sn58BiはんだにおけるEM損傷機構の解明およびEM損傷の定量的評価を遂行したため。
|
今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、平成27年度に解明したSn58BiはんだのEM損傷機構に基づき、熱処理・人工保護膜コーティングなどを行うことによりSn58BiはんだのEM耐性を強化させると共に、はんだ接合の信頼性向上対策を提案する。また、二元共晶合金の原子拡散機構を金属リサイクル技術の開発に応用し、研究活動を展開する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していた消耗品 プリント基板製造委託は研究の進展状況により、次年度に実施することに変更したため。
|
次年度使用額の使用計画 |
Sn58Biはんだのエレクトロマイグレーション試験用プリント基板製造委託に使用する予定である。
|