平成28年度は以下の研究実績を得た。 1.被覆によるバックフローのはんだ長さ依存性に着目して開発した直線型Sn58Biはんだ接合試験片を用いて、エレクトロマイグレーション(EM)およびバックフローに支配される原子ドリフト速度を測定することにより、EM損傷発生の臨界条件を高精度に推定することを実現した。当該臨界条件から求めたEM損傷が生じる臨界の電流密度であるしきい電流密度を評価指針とし、人工保護膜コーティングにおけるEM耐性強化効果の評価手法を確立した。 2.集積回路の封止に用いられるアンダーフィル材を人工保護膜としてSn58Biはんだを被覆し、酸化膜の場合(人工保護膜なしの場合)と比較した。被覆ありのSn58Biはんだではしきい電流密度が37-55%向上したことを見出し、アンダーフィル材を保護膜とすることによるEM耐性強化効果を実証した。また、アンダーフィル材がヒートシンクとして機能し、はんだの溶断耐性を向上させることも見出した。これらのことより、Sn58Biはんだ接合の信頼性向上対策を提案した。さらに、はんだボールを模擬したたる型サンプルの作製にも成功した。理論的考察と数値シミュレーションにより、直線型サンプルの場合に比べ、たる型サンプルではしきい電流密度が向上するという推測を得た。 3.平成27年度で解明した高密度電流下Sn58BiはんだのEM拡散機構をさらに発展し、微量添加元素によるEM耐性強化対策を提案したとともに、当該はんだ接合部での新たな信頼性問題を予測した。また、上記の拡散機構を基にした二元共晶合金のリサイクル技術の理論基盤を構築した。
|