研究課題/領域番号 |
15K17932
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
波田野 明日可 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (20707202)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 流体構造連成解析 |
研究実績の概要 |
本年度は,一体型解法のALE流体構造連成解析を用いることで,狭窄を伴う柔軟管内の流れについての基礎的検討を行った. 狭窄管の解析においては,以下のような点を確認した. (1)入口圧力を制御した剛体管解析と柔軟管解析の比較を行った.柔軟管の流入流量は剛体管と比較して振幅が大きく,位相が早くなり,流出流量については振幅が小さく,位相が遅れるようになった.また流出流量の位相の遅れに従い,出口圧力の位相が遅れるようになった.(2)ヤング率を変えた解析の比較を行った.ヤング率が小さくなるほど出口圧力の位相が遅れ,ピーク値は小さくなった.(3)狭窄率を変えた解析の比較を行った.狭窄率が小さくなるほど,狭窄部での圧力損失が小さくなり,同じ入口圧力に対してより大きな流量が流れるようになった.また,圧力損失が小さくなった結果,狭窄後流の圧力が大きくなり,狭窄下流の管の弾性効果が大きくなった.(4)これらの結果は定性的に実験と一致した. 加えて分岐を模した境界条件を付加した解析を行い,以下の点を確認した. (1)柔軟管のヤング率は流量分配への影響は小さかった.(2)狭窄率が小さくなるほど,流量分配が均等に近づき,結果分岐上流の圧力が全体に小さくなった.(3)分岐部と分岐前のコンデンサ値(弾性効果)を変えた解析の比較を行った.コンデンサ値が大きくなると,その下流の流量・圧力の振幅を小さくし,上流の管のコンデンサ効果を抑える傾向が見られた.(4)高血圧を想定したパラメータ値にて解析を行った.血管が硬化して弾性効果が小さくなると,下流の流量・圧力の振幅を大きくし,さらに高血圧化を助長させる可能性が示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分岐した柔軟管の流体構造連成解析を実現し、現象の傾向を把握した。当初の計画からみて、おおむね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
不確定性の定量的把握 血管の解析に伴う不確定性の要因は大きく3つに分類できる.1つ目は生体に起因するもので,個体差・空間的不均一・運動状態による変化などが挙げられる.2つ目は計測誤差であり,画像境界の不鮮明,非侵襲計測の難しさなど,生体を対象にするが故の誤差の拡大がある.3つ目はモデル化に際するもので,メッシュに施されるスムージング処理,残留応力など物性値表現の不完全さなど,計算の実現のための措置ではあるがこれも不確定性の要因である.本課題は対象を柔軟管にすることで実験における不確定性を低く抑え妥当性確認を行い,応答解析には実血管に想定される不確定性を入力とする.生体に起因するものに関しては文献値を調査する.計測誤差に関しては複数の計測機器を用いた実験を通して定量化する.モデル化に際するものはスムージングの程度の異なるものや材料構成式を単純化したもの等を用いて検証する. 機械学習による流体パターンのクラスタリング解析 流体構造連成解析で得られる解析結果は,3次元空間に分布する変位・流速ベクトルの時刻暦データとなる.本課題の実現には,複数の不確実パラメータセットに対して得られた流体構造連成結果を比較し特徴的なパターンに分類し,各パターンに相当する不確実変数の範囲を同定する必要がある.そこで,まず結果を教師なしの機械学習によりクラスタリング分析を行い,特徴的な固有パターンを持つクラスタに分類する.節点の変位・流速ベクトルに関する階層的Ward法によるクラスタ分析を予定している.各クラスタの平均・分散や,クラスタの流体動態を可視化し,特徴的パターンの抽出が適切に行えたか確認する.次に,各クラスタに相当する,不確実変数の分布範囲を特定するため,教師あり学習で各クラスタとなる不確実変数を学習する.
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