自動車事故による死者数と負傷者数は減少傾向にあるが,事故発生件数に対する死者数と負傷者数の割合はほとんど変化しない.これは自動車の衝突安全技術の設計開発と性能評価において乗員の運転姿勢や能動的動作を考慮していないためであると考えられる.本研究では,後面衝突事故時における頚部傷害リスクに及ぼす運転姿勢の影響を解明するために,実際に存在しうる運転姿勢の個体差とその時の筋活動を明らかにするとともに,アクティブ乗員モデルによる自動車衝突事故解析手法を新たに確立することを目的としている.平成28年度では,乗員筋骨格モデルの検証,能動的運動時の乗員筋活動の調査,アクティブ頭頚部有限要素モデルの構築および頚部傷害リスクに及ぼす頭部姿勢の影響解析を行い,以下の成果を得た. (1) 昨年度に開発した筋骨格モデルを用いて先行研究における被験者実験の再現解析を行い,プリクラッシュ時(衝突直前)の姿勢における筋活動の解析結果の妥当性を確認することができた. (2) 筋骨格モデルを用いて昨年度にドライブレコーダ映像から明らかにしたドライバの代表的頭部姿勢を再現し,低加速度負荷時の筋活性や頚部負荷を調査することができた. (3) 頭頚部有限要素モデルに筋肉モデルを導入し,頭頚部の能動的運動の再現可能性を明らかにすることができた. (4) アクティブ頭頚部有限要素モデルを用いて後面衝突時の頚部傷害リスクに及ぼす頭部姿勢の影響を解析することができた.
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