アルミニウム合金板の室温から260℃における二軸引張試験を実施して,温間等塑性仕事面を取得した.その結果,室温ではvon Misesの降伏関数によく一致したが,温間では平面ひずみ変形近傍の応力が低下し,Trescaの降伏曲面に近づいた.このことから,本供試材の異方性特性は温度とともに変化することが確認された. 続いて,室温から300℃における応力緩和試験を実施して,予ひずみ時の応力‐ひずみ曲線と応力緩和中の応力‐時間曲線を取得した.その結果,室温と100℃では予ひずみ変形中に流動応力の差が見られなかったにもかかわらず,応力緩和試験では100℃の方が顕著な応力低下を示した.また,応力緩和率は温度の上昇に伴い大きくなった.予ひずみ変形時のひずみ速度が応力緩和特性に与える影響は小さく,応力緩和では温度の依存性が支配的であった.とりわけ,温度ごとに応力の収束値が異なっており,300℃ではほぼ0MPaまで応力が低下した.これらの現象は既存の速度依存型応力‐ひずみ構成モデルでは表現できない.また,応力緩和後の再引張試験を実施したところ,100および200℃では再引張時の降伏応力が応力緩和開始時の応力よりも低下したため,動的回復が起こったと考えられる.しかし,300℃では再降伏応力と応力緩和開始時の応力がほとんど等しくなった.これは300℃の高温化では予ひずみ変形時に動的回復が完了したためであり,したがって,応力緩和の支配的メカニズムが動的回復や動的再結晶ではなく,粒界すべりである可能性を示した.
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