研究課題/領域番号 |
15K17943
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
内田 真 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 講師 (90432624)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 寸法依存性 / 発泡プラスチック / 均質化法 |
研究実績の概要 |
発泡プラスチックは現在の工業材料の中でもトップクラスの軽量性を有しており,断熱性や衝撃吸収性の観点からもきわめて重要な材料である.発泡プラスチックでは,材料の発泡倍率を大きくするほどより軽量となるが,その一方で強度が著しく減少する.したがって,材料を効果的かつ安全に使用するためには,材料の微視的スケールにおける構造や変形に基づいて巨視的な力学特性を評価できる階層性モデリングが重要である.このとき,気泡などの微視領域の代表寸法が材料の機械特性に及ぼす影響を評価するためには,寸法依存性を有する非局所モデルの構築が不可欠となってくる. 本研究では,従来の1次均質化法に,巨視的なひずみこう配による微視スケールのエネルギー変化を導入した2次均質化法を用いて,発泡プラスチックの非弾性変形過程における不均一変形を評価可能な階層性非局所モデルの構築を試みる.まず,2次均質化法を大変形非弾性変形に適用可能とするため,Update Lagrange法に基づいた速度形に拡張する.同時に,3次元デジタル画像相関法を用いて実際の発泡プラスチックの非弾性変形過程における不均一変形状態や体積変化を定量的に評価する. 構築したモデルによる数値シミュレーション結果と,実験によって得られた非弾性変形過程における変形状態を比較することにより,モデル内で使用される構成式や材料パラメーターの同定を進める.特に,本研究では非局所変形の評価が可能なモデルの構築を目指しているため,材料の微視領域を代表する寸法が,巨視的な不均一変形に及ぼす影響を詳細に調べることにより,寸法依存性のモデルの構築を試みる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
材料の非局所的な変形挙動をモデル化するためには,不均一変形を定量的に表すひずみこう配と,それと仕事共役な高次の応力を導入した解析手法を構築することが必要となる.これまでひずみこう配を導入した研究は数多く報告されているが,これらの研究では材料の微視構造と関連付ける形式の高次応力を定義している.本研究では,材料が特定されていない場合でも定義できる高次応力として,接線剛性係数の2次モーメントを用いた記述法を用いて2次均質化法への導入を進めている.現在,このような高次応力が材料の不均一変形状態を記述するうえで適切なものであることを示すための検証を進めている. 同時に,代表的な発泡プラスチックの一つであるLDPEフォームを用いて微視構造のX線解析と単軸引張変形過程における不均一変形状態と体積変化の定量的な評価を実施した.オープンセルフォームとクローズドセルフォームを形成する2種類のLDPEフォームの微視構造解析を実施した結果,オープンセルフォームでは発泡倍率の増加とともにセルサイズは変化せずセル壁の厚さが減少すること,クローズドセルフォームではセル壁の厚さは変化せずにセルサイズが増加する傾向がみられた.この結果は,材料の変形に及ぼす気泡の体積分率とサイズの影響を切り離して考察できる可能性を示唆している.また,LDPEフォームは非弾性変形中顕著な体積変化を示すことがDICにより明らかとなった.これらの結果をモデルへと反映させ,材料の変形挙動を適切に把握できる理論の構築を進めていく.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに,速度形2次均質化法への拡張と高次応力の導入方法に関する検討を進めてきた.構築した手法を用いて階層構造帯の変形挙動を評価するためには,微視構造を形成している材料の変形を記述するためのパラメーターの同定,ならびに,微視構造の幾何学形状の決定,が必要となってくる.前者は,バルク上樹脂材料の力学試験を実施し,必用なパラメーターのフィッティングを進めていく.後者に関しては,さらに詳細なX線解析を実施して,構造の定量化を進めるとともに,仮の微視構造を入力して得られた巨視的な力学特性と,実際のLDPEフォームの実験結果とを比較しながら,必用な修正を加えていく.特に,オープンセルフォームとクローズドセルフォームをそれぞれ特徴づける構造の最適化を課題として研究を進めていく. さらに本研究では材料の微視構造を代表する寸法に依存した変形挙動のモデル化を課題としている.本研究の微視構造を代表する寸法としては,気泡のサイズが妥当であると考えらえる.このような気泡のサイズが巨視的な不均一変形に及ぼす影響を定量的に評価するために,平行部の断面積が連続的に変化するような試験片を相似な形状でサイズを変更させて複数作成し,引張変形過程で生じる不均一変形をDICにより定量的に評価する.そして,数値シミュレーション結果とともに材料の不均一変形に及ぼす微視構造の代表寸法の影響について考察し,工業材料の非局所変形の解明を目指す.
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