先行研究としてこれまでに,日本国内大手工具メーカーの超硬スクエアおよびボールエンドミルカタログデータに対して,非階層・階層型クラスタリング手法を併用したデータマイニング手法を適用することにより,金型の粗加工から中粗加工に適用能な切削条件を決定できる支援システムを提案してきた.これらの切削条件決定支援システムのノウハウを難削材料加工用のエンドミルに適用することにより,未知の被削材料や切削工具に対応可能な切削条件決定支援システムを構築する必要がある.昨年度までに構築した小径エンドミル切削条件決定支援システムの有用性を実験的に検証した.被削材として,一般的に小径エンドミルを用いた加工の対象として選択されない超々ジュラルミン合金を選択したことにより,工具カタログに推奨切削条件が記載されていない場合において,本システムの有用性範囲を調べた.昨年度に得られた結果と同様に,マイニングによって導出された軸方向の切り込み量の設定を,他のアルミ合金に対してのカタログ推奨条件程度にまで下げることにより,カタログが推奨する切削条件よりも総合的に効能率かつ加工後の切り残しの少ない良好な表面性状が得られることがわかった.これらの成果は,国際学会および投稿論文にて発表および公開されている.本研究により非階層・階層型クラスタリング手法を併用したデータマイニング手法の有用性を示したことで,非熟練技術者育成を支援できるだけでなく,工具カタログに隠された暗黙知の体系化の根幹技術となれる可能性が示せた.
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