研究課題/領域番号 |
15K17954
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研究機関 | 一関工業高等専門学校 |
研究代表者 |
原 圭祐 一関工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (30515812)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 超音波切削 / 規則テクスチャ生成 / トライボロジー |
研究実績の概要 |
本研究課題では,超音波振動切削により,高速切削を行いつつ加工面に規則テクスチャを残す,付加価値のある加工技術を構築することを目的とする.平成29年度は,前年度に製作した高速切削で規則テクスチャを得るための切削実験装置ならびにトライボ特性の評価実験装置について改良・整備を行った. まず,規則テクスチャ切削実験装置であるが,市販の高速スピンドルと電動送りステージを組み合わせ,小型自動旋盤形態の加工機を製作した.これに,超音波切削装置を組み合わせ,規則テクスチャ加工機としたものである.この装置で,試験切削を行ったところ,アルミニウム合金の高速切削は可能であったが,チタン合金の切削ではびびり振動を引き起こし,剛性不足があることが判明し,剛性の改良に大幅な時間を費やしてしまった.現在は,ステンレス鋼,チタン合金の切削でも安定した切削が可能となったため,試験回数を増やしていく予定である. トライボ特性の評価実験装置については,前年度に市販の3分力ロードセルと測定物に回転運動を与える駆動機構を組み合わせた,「ピンオンディスク」形態の試験機を構築したが,今年度これを長手方向に往復運動させる装置へと改良し,旋削面を評価できるようにした.電磁ステンレス鋼を旋削した試験片のトライボ特性を測定したところ,超音波振動なしの試験片に比べ,超音波切削した規則テクスチャの付いた試験片は平均摩擦係数が低減(μ=0.123→0.116)すること,また摩擦のばらつきが少なく安定した摺動面となることを確認した.摩擦痕の観察の結果,超音波切削し規則テクスチャとなった面では摩耗部が少ないことも確認している.しかし,詳細な現象については解明されていないこと,テクスチャのピッチ・深さなどの影響については調査しきれていないため,これらを継続的に研究していく予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年に引き続き,実施項目の順序が入れ替わっており,超音波切削装置よりも切削実験の方に重きを置いている状態である.現在のところ,3年目に実施予定であった,トライボ特性評価装置の改良とトライボ特性の評価方法の検証,難削材加工性能の評価試験について進行中で,比較的難削材である,ステンレス合金,チタン合金のトライボ試験片の製作ができるようになった.しかし,加工装置の改良に予想以上の時間を要したため,工具振動装置の改良は後回しとなってしまった.以上の事から,全体として進行状態がやや遅れていると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,以下の項目について引き続き実施していく予定である。 ○難削材加工の被削特性改善と規則テクスチャ面の生成技術の成熟→現在,ステンレス鋼,チタン合金の切削試験を実施中,これを継続して行う ○テクスチャ面の生成実験ならびに幾何学模様の評価試験→テクスチャの凹凸のピッチや交差角度を可変する技術を確立し,この最適化を目指す ○半径方向振動を重畳するシステムの構築→特殊電源の製作と背分力方向振動機能付き工具ホルダーの設計・製作
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次年度使用額が生じた理由 |
予算を大きく使用する,背分力方向振動装置の開発を後発としたことが大きな理由である.本研究に関与する他のシステムの改良に時間を要したため,大きな費用を要する,強力超音波電源,信号取得システムの構築に着手しなかったことが主要因である.なお,今年度は実験装置の小改修・トライボ試験装置の改造に必要な材料・部品,試験片,工具等消耗品の購入と学会参加費用等の執行に留まっている.
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