本研究課題では,高速超音波振動切削により,被削性の改善と加工面への規則テクスチャ生成能力を両立した,付加価値のある加工技術を構築することを目的とする.平成30年度は,前年度までに製作した高速超音波切削装置を用いての切削実験ならびにトライボ特性の評価実験装置について改良・整備を行った.まず,規則テクスチャ切削実験であるが,市販の高速スピンドルと電動送りステージを組み合わせた小型自動旋盤形態の加工機に超音波切削装置を組み合わせたものである.規則テクスチャは,超音波振動の条件により変えられることがわかっている.この装置で,主にチタン合金の高速切削試験を行った.試験の結果,チタン合金の通常切削ではびびり振動を引き起こしたが,超音波切削でこれを大幅に減少できることを認めた.また,規則テクスチャは,チタンでもアルミニウムやステンレス鋼と同様に得られることを確認した.このほか,より凹凸の大きな規則テクスチャを得ることを目的に,超音波振動に同期した半径方向振動を与えられる装置の開発を試みたが,満足のいく性能を得ることはできなかった. トライボ特性の評価実験装置について,昨年度は長手方向にストローク運動させる装置へと改良し,旋削面を評価できるようにしたが,試験装置の剛性不足が確認された.そのため,試験装置各部を強化する改良を行った.これにより,トライボ試験中のがたつきを低減し,より安定した試験ができるようになった. 以前示したように,超音波切削で生成した規則テクスチャによる摩擦のばらつきが少なく安定した摺動面となることを確認している.そのため,課題研究期間終了後も,多種の試験片を用意し,トライボロジー特性の評価・改善を継続して行っていく予定である.
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