研究課題/領域番号 |
15K17958
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
長井 超慧 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (20586002)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 形状モデリング / X線CTスキャン / 繊維構造 |
研究実績の概要 |
2016年度は、繊維束の織物状の構造をもつ物体に関する処理を中心に、以下のように研究を進めた。さらに、繊維束構造または気泡を含むマイクロストラクチャのX線CT計測や、そのモデリングに関する研究の調査を行った。データ量が大きくなりがちなX線CTデータの省メモリ化に関する調査も実施した。
[繊維束構造]2015年度までに得られた繊維束構造検出プログラムは、セラミックス基複合材料からなる特定の織りパターンを有する物体を対象としていた。これをより一般的な織物に拡張すべく、提案アルゴリズムの改良と検証実験を行った。 2015年度の予備実験で得たX線CT計測用のパラメータを基に、繊維束の織物構造を有する様々な素材の物体のX線CT計測を行った。今まで実験対象としてきたセラミックス基複合材料から成る密な織物構造以外の織物に対する新たなパラメータの策定を行った。 これらのX線CTデータに対し、織り構造を抽出するための実験を行った。織りパターンは、従来のもの以外に、より一般的な織り方や厚みのないものも対象とした。実験結果では、繊維束が独立して存在する箇所の検出は成功しているものの、繊維束同士が重なる箇所においては、その前後と繊維束がうまくつながらないという問題が発生することが確認された。この問題の解決法について、手法の改良を開始した。 [発泡金属]昨年度定めたX線CT計測用のパラメータを基に計測を実施し、ノイズやアーチファクトが少なく、モデリングの実験に適した、高解像・高品質なCTデータを得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に得られたX線CTの計測パラメータに関する知見を基に、様々な織物構造を有し、素材の異なる物体のX線CT計測を行い、ノイズ等の少ない高品質な計測データを得ることに成功した。 織り構造の検出に関しては、今まで特定のパターン・素材からなる織構造を対象に実験を行っていたが、今年度は異なる素材や織りパターンを有する物体のX線CTデータを得て、より一般的な検出実験を行うことができた。 これらにより、開発中の手法が、昨年度までとは異なるパターンに対して有効であることを確認した。 マイクロストラクチャのX線CT計測・解析に関する研究は現在非常に盛んにおこなわれており、その情報収集に関して充実した結果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
[繊維束構造検出の改良] 今年度の実験で確認された問題点である繊維束の重なり部分の抽出もうまく行えるよう、引き続き繊維束の検出精度の向上を行う。 [繊維束構造のモデリング法の改良]密な織物については検出結果が見づらく、モデリング手法にはまだ改善の余地がある。現在用いている流線以外によりよい表現方法がないか模索する。これは、繊維束検出のための指標や条件にも密接に関わっており、必要に応じて検出法の再考も行う。 [発泡金属のモデリング] X線CT計測データを、昨年度開発した「複数マテリアルから成る物体の解析用メッシュを生成する手法」で処理した結果を基に、発泡金属のモデリングを行う。 [AM技術に適したモデリング法の開発]素材は限定されるものの、マイクロストラクチャを3DプリンタなどのAM(additive manufacturing)技術により造形する試みも注目を集めている。高い視認性の実現・サポートの除去可能性など、AMならではの課題もあるため、これらを視野に入れたモデリング法を開発する。
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