研究実績の概要 |
本研究は,インペラ磁気浮上システムを用いたセンサレス血液粘度計測,高精度流量推定,血液凝固検知機能を有する,多機能化人工心臓の実現を目的としている.平成27年度は,提案するセンサレス粘度計測法を用いて,豚血液の粘度をリアルタイムで計測し,その精度を評価した.具体的には,磁気浮上用電磁石を用い,インペラを周波数60Hz,振幅50ミクロン程度で加振し,その時のインペラ変位と電磁石電流の位相差から粘度を推定した. 血液はずり速度に応じて見かけの粘度が変化する非ニュートン流体であるため,参照用粘度計も広範囲にずり速度を変更する必要がある.本研究で用いる血液ポンプの場合,最高でずり速度30,000s^-1程度まで評価する必要があるが,市販の粘度計では再現できないため,新たに参照用の共軸二重円筒型粘度計も設計・試作した. 本ポンプでは,5L/min, 100mmHgの条件の場合,血液吐出のためのインペラ回転によるずり速度は22,000s^-1,血液粘度計測のための加振によるずり速度は100^-1程度である.提案する粘度計測手法では,どちらのずり速度が血液に支配的に作用するか不明確である.そこで研究の第一段階として,試作共軸二重円筒型粘度計で低ずり速度状態(< 200^-1)と高ずり速度状態(>20,000s^-1)を再現し,それぞれで血液粘度を計測し,血液ポンプの推定粘度値と比較した.その結果,22,000s^-1時に試作粘度計で計測した血液粘度が2.5mPasであったのに対し,センサレス粘度計測値は2.8mPasとなり,両者はよく一致した.本結果より,提案する粘度計測法ではインペラ回転によるずり速度が支配的に作用していることを明らかにした.
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