本研究は,量子ドット(QDs)の光学特性を温度依存性に注目して評価し,マイクロ流路内の温度場と速度場の計測についてQDsの有用性を検討したものである.まずQDsの光学特性を調査し,より変化率の高い光学特性を温度場計測時の指標とした.その後,QDsの光学特性を利用した温度場計測を行い,計測結果を評価することにより実際にQDsの蛍光が温度場測定に適しているか検討した.QDsの適性が確認された後は蛍光粒子によるマイクロ流路の速度場計測について信頼性の評価を行った.温度場と速度場計測の信頼性を確認できた後,二種類の方法による温度場・速度場同時計測を実施した.以上の実験では一定の結果を得ることが出来た.それぞれの実験の概要は以下に記述する.1)QDsの光学特性を評価するために分光器を使用し,1060Cでの各温度における蛍光スペクトルの計測を行った.それぞれの光学特性に関して温度変化に対する関係をグラフにし,最も変化率の高い光学特性を調査した.2)QDs溶液をマイクロ流路内に流し,マイクロ流路内の温度場を可視化する実験を行なった.輝度値と温度との相関関数を算出した後は相関関数の正確性を恒温画像によって確認し,温度差をつけた場合の流れについて可視化計測した.3)蛍光粒子を用いてマイクロ流路内の速度場計測を行なった.マクロスケールとは異なり,マイクロスケールでは計測誤差が生じることが多いため改善方法を模索した.4)蛍光粒子とQDs溶液を用いた温度場・速度場同時計測を行なった.粒子画像を用いた温度場計測する場合,粒子の蛍光を除外する必要があるため,温度場計測のプログラムを改良した結果を提示した.5)QDsを速度場計測のマーカーとする場合,粒子径を大きくする必要がある.そのためQDsを他の粒子に均等に吸着させる実験を行なった.実験によって作成した粒子の外形と流路内での粒子像を提示した.
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