研究課題/領域番号 |
15K17977
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
長谷川 浩司 工学院大学, 工学部, 准教授 (90647918)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 音場浮遊法 / 液滴 / 非線形ダイナミクス / 並進運動 / 微粒化 / 非接触流体制御 |
研究実績の概要 |
近年、分析化学分野や生物・医学分野、さらには燃焼科学分野をはじめとした幅広い分野において、非接触流体制御技術が注目されている。特に、非接触流体制御技術の1つである超音波浮遊法は、容器壁面からの汚染の影響を抑制することや流体次第では人体への危険を回避することが可能であるというメリットに加え、静電浮遊法や電磁浮遊法などのその他の浮遊法と比較した場合に、制御対象流体に制約がないことから積極的な活用が望まれている。しかしながら、申請者による強力超音波による液滴浮遊実験により、浮遊液滴には、回転や振動、さらには分裂・微粒化に加え、大変形を伴う界面変形や内外部流動など、非線形でダイナミックな挙動が発生することが明らかとなっている。このような浮遊液滴の非線形ダイナミクスが非接触流体制御の安定性に及ぼす影響については、理論的や解析的な知見は拡充されてきたものの、実験技術上の困難が主な理由となって、実験的知見が乏しいのが現状である。 本研究では、超音波浮遊液滴の非定常並進運動に関する定量的実験情報を収集し、かつその制御を試みることで非接触流体制御技術の基礎の確立に資する実験的知見を拡充することができた。これまでに純水、エタノール(表面張力の影響)、グリセリン(粘性の影響)を用いて、流体物性が浮遊安定性に及ぼす影響について明らかにするとともに、特に当該年度は液滴の動的挙動および液滴周囲の音圧分布情報を基に、非定常並進運動をモデル化した。具体的には、浮遊液滴の非定常並進運動に対して周波数解析を施すことで、固有振動数を特定し、音場と浮遊液滴の非定常並進運動の関係を定式化した。加えて、既に次年度実施予定としていた浮遊液滴の微粒化挙動の発生条件の特定に向けた基礎的検討にも着手しており、高時空間分解能下での浮遊液滴の微粒化過程の観測にも成功している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
音場浮遊法を用いた高精度な非接触流体技術を拡張するため、浮遊液滴の非定常並進運動について、実験事実を基にモデル化した。具体的には、過年度に使用実績のある純水に加え、エタノール(表面張力の影響)、グリセリン(粘性の影響)を用いて、流体物性が浮遊安定性に及ぼす影響を特定した。当初の予定通りに高速度カメラによって取得した浮遊液滴の非定常並進運動に対して周波数解析を施すことで、固有振動数を特定するとともに、得られた液滴の動的挙動および液滴周囲の音圧分布情報を基に、非定常並進運動をモデル化した。 既に、次年度に予定していた浮遊液滴の微粒化挙動の発生条件の特定に向けた基礎的検討にも着手しており、高時空間分解能で液滴の微粒化過程、特に微粒化発生時の界面挙動の観測に成功している。
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今後の研究の推進方策 |
浮遊液滴の界面に発生する微粒化現象の素過程を実験的に明らかにする。既に液滴界面近傍に対して、高空間分解能、高時間分解能下での詳細可視化計測に成功しており、次年度は非線形かつダイナミックな浮遊液滴の微粒化挙動に関する継続した定量的実験情報の収集、および微粒化発生条件を特定し、安定制御範囲の同定を試みる。具体的には、微粒化発生時の液滴界面での波立ちに着目し、既存の不安定性理論との比較、更には実験事実を基に、理論の補完・拡張を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究推進状況を踏まえ、購入品を一部変更した方が効果的な研究費用の使用が可能であると考えたためである。具体的には、液滴の動的挙動を解析するための専用アプリケーション購入を検討し、得られた結果から液滴の動的挙動のモデリングを行うことを想定していたものの、既存の画像解析プログラムや実験装置の改修により、当該年度に新規物品購入をせずとも当初計画以上の進展が見られた。
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次年度使用額の使用計画 |
当初計画以上の進展が見られているため、使用流体を拡張・新規購入し、より広範囲な実験条件で流体物性が浮遊液滴の安定性に及ぼす影響を調べることを計画している。併せて、これまでの研究によって必要性が明らかとなってきた浮遊液滴サイズの高精度制御を行うため、液滴の自動注入装置の開発も検討する。
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