研究課題/領域番号 |
15K17979
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
小池 俊輔 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 航空技術部門, 研究員 (40547064)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 粒子画像流速測定法 / 縦渦 / 高Reynolds数遷音速風洞 / ボルテックスジェネレータ / 衝撃波 / 遷音速バフェット / ステレオ計測 |
研究実績の概要 |
本研究では,遷音速条件下の衝撃波振動を抑制するボルテックスジェネレータ(以下VG,翼片であり,気流方向に軸をもつ渦,縦渦を発生する)を調査する.報告者らのこれまでの研究により,翼面上では,翼のスパン方向に流れがある場合(横流れがある場合,VGの効果が著しく広がることが分かってきた.本研究では,この理由を明らかにするために,横流れのない場合と横流れのある場合の2つの条件下において,VGの発生する縦渦とその周囲の流れの流速分布を計測する.その計測結果を比較することにより,VG効果に対する横流れの影響を明らかにすることを目的とする. 初年度である本年度は,遷音速条件下の横流れのない条件下の微小縦渦を,粒子画像流速測定法(PIV)により計測した.既存のステレオPIV装置を一部改修後,JAXA 0.8m x 0.45m高Reynolds数風洞に導入した.横流れのない条件を調べるために,翼模型として,後退角のない2次元翼模型を対象とした.Reynolds数5 x 10^6かつMach数0.74条件下のボルテックスジェネレータから発生した約5mmの縦渦を計測することに成功した.遷音速領域の高Reynolds数風洞におけるPIVは国内初であり,微小縦渦をこの領域で計測した計測例は報告者の調べる範囲ではない.コード位置40%と50%の2断面の縦渦とその周囲の流速分布を調べた結果,計測した範囲では,数値流体解析(CFD)により予測されていた縦渦側方の大きな速度欠損領域はなかった.PIV計測系の分解能や測定領域の不足も考えられるため,光学系やカメラ校正法の改良を次年度に向けて行う. 横流れありの条件を調査する準備として,後退角つきの2次元翼模型の製作を完了した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
大型風洞試験のため,国内外の航空機開発試験の優先順位の影響を受けた.そのため,風洞試験期間が当初予定の通り確保できなかった.今回報告した試験結果は,2016年3月に実施したものである.予定よりもデータを取得する時期が遅れたため,解析や計測装置の改修作業が遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
最大の課題であった高Reynolds数風洞へのPIV計測系の導入は成功した.2016年度の風洞試験ではこの成果に基づき,8月初旬と8月下旬に風洞試験を実施して本研究の目的を達成できるように努める. 試験期間までに,課題の残る光学系やカメラ校正手法の改良を行う.試験期間の前半でステレオPIVにより,後退角なし模型による流れなしの条件下の縦渦を再度精緻に計測する.その後,後退角付き模型を使用して,横流れ条件下の縦渦の計測を行い比較する. 試験の後半では,時系列PIV系を導入する.これにより,これまでの平均場による評価に加え,非定常場による評価を行う.この結果を持って,横流れのVGへの影響を明らかにしたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
大型風洞試験のため,日程確保が当初予定通りにはいかなかった.具体的には,他の航空機開発試験の影響を受け,風洞試験期間を年度末(3/28-3/31)にせざるを得なかった.そのため,2015年度の試験後に行う予定であった光学計測系の改修作業が次年度作業になった.これらの改修費用が次年度回しとなったため,次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
2016年3月末に風洞試験が終了したことから,風洞試験における課題抽出が完了し,対策も明らかになった.よって,2016年度前半に,当初2015年度後半で予定してたPIVの光学計測系の改修を行う.次年度使用額を用いて,これらの光学機器の購入と改修を行う.
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