研究課題
最終年度(平成29年度)では,まず,生体表面を模擬した,反射と屈折が伴う平面に対して,ふく射輸送方程式の数値計算を行い,ふく射輸送方程式の解析解を境界条件について拡散近似した解と比較することで,境界条件による光伝播への影響を調査した.光源ー検出点間隔が5 mm以上であれば,数値解と近似解は一致した.この結果より,境界条件の影響は上記の条件であれば,非常に小さいことが示唆され,生体のふく射輸送モデリングにおいて重要な知見である.次に,δ-Eddington近似(dE近似)について,2次元媒体に対して,Chebyshev多項式を用いて定式化した.そして,2・3次元におけるdE近似を用いた場合の位相関数の規格化条件について数値解析を行い,位相関数をそのまま離散方位法で計算した場合に比べて,誤差が小さくなっていることを確認した.また,0次精度のdE近似は拡散近似とほぼ等価であることも輻射輸送方程式と近似式との数値計算の比較により確認した.最後に,生体の微細構造について,当初は現象論によるモデル式を用いて考慮する計画であったが,より微視的な時空スケールであるMaxell方程式から出発したモデル構築の必要性を認識したため,球状誘電体分散モデルにおける光学特性値の数値計算プログラムを構築し,その誘電体の体積分率依存性を解析した.研究期間全体の成果としては次の3項目である:1)高速かつ高精度のふく射輸送方程式の数値計算手法を開発したこと,2)光学特性値の逆解析アルゴリズムを構築し,メロンなどの農産物や食品の光学特性値を算出し,その構造特性による依存性を明らかにしたこと,3)0次精度のdE近似が成立する時空スケールを光学特性値の関数として提示したこと.微細構造に関しては,数値解析は行ったものの,実験と比較するまでには至らなかったので,今後の課題としたい.
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 備考 (3件)
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