次世代の高度太陽エネルギー利用方法の一つとして期待される太陽熱光起電力(Solar-TPV)発電の研究を行っている.本研究で作製する波長選択性エミッターは, 光電変換セルの外部量子効率が最も高い領域に整合するような狭帯域熱ふく射光を発現させるもので ある.そこで我々は,ふく射特性を自由自在に制御することが可能なメタマテリアルに着目している.さらに開発したエミッターを搭載することで,大型太陽集光シミュレーターを用いた高効率なSolar-TPV発電システムを実証する. 本研究課題の開始段階では,メタマテリアルに関する理論に基づき,上記のような特性を持つ波長選択性エミッターを実現できることを数値解析により見出していた.これまでに理論並びに数値解析に基づいてメタマテリアル構造の設計を行い,実際にエミッターを作製することを目的として研究を進めた.作製には電子線リソグラフィ,スパッタリング,反応性イオンエッチングといった半導体プロセスを活用した.また,エミッターの耐熱性を高めるためエミッター上層に誘電体コーティングを施すように改良した.この作製したエミッターの光学特性を測定し,Solar-TPV用のエミッターとしてほぼ設計通りの性能を得ることに成功した. 続いて,このエミッターを真空容器内で電気加熱し,PVセルで発電が可能かどうかを検討するための実験装置を製作した.現在までの実験ではエミッター表面を真空下で加熱することでPVセルから光起電力を得られることを確認した.
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