研究課題/領域番号 |
15K17986
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
浅岡 龍徳 信州大学, 学術研究院工学系, 准教授 (30508247)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 未利用エネルギー / 吸収式冷凍機 / スラリー / 固液二相流 / 蓄熱 / 固液相変化 |
研究実績の概要 |
本年度の研究では,2つの課題(課題A:エネルギー供給の変動に対応した吸収剤の再生速度の制御手法の開発,課題B:氷の分離貯蔵のための氷スラリーの安定輸送・貯蔵手法の開発)に対し,以下の検討を行った. 課題Aを解決するため,水-LiBr-エタノール混合物の蒸発潜熱・気液平衡・飽和蒸気圧の測定という小課題を設定し,特に,気液平衡と飽和蒸気圧の測定を実施した.不凝縮ガスを除去し,温度管理された密閉容器の中に試料を設置し,平衡状態での全圧を測定するという簡単な装置により飽和蒸気圧を測定した.さらに,その容器から蒸気だけを抜き出して液体窒素で冷却・液化させて,屈折率を測定する方法で,気相の濃度を測定した.その結果,水-LiBr-エタノール混合物の気液平衡は,エタノール水溶液(水ーエタノール混合物)とほぼ同じ傾向を示し,また,飽和蒸気圧は,2成分混合物の文献値を使って,簡単な近似式により予測可能であることを示した.この成果は,今後課題Aに取り組む上で不可欠であり,非常に重要な知見である. 課題Bを解決するため,氷スラリー流動時の圧力損失の把握と閉塞の抑制について検討した.これは,当初2年目に実施することを想定しいた小課題である.検討の結果,管径に対して,氷サイズが小さい条件では,氷スラリーがほぼ均一な状態で流動するのに対し,サイズが大きくなると不均一化し,圧力損失などに時間的な変動が生じることがわかった.また,初め均一に流れている条件でも,長時間の流動に伴い不均一化することも明らかにした.この現象は,氷スラリー流動時の閉塞事故の原因となるため,その回避のために,原因究明が必要である. さらに,本研究の最終目的である,エタノール水溶液-LiBr吸収式氷スラリー生成機の試作機の連続運転を実現するため,試作機の改良を行い,時間に限りはあるものの一定時間の安定運転を実現することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に示した通り,課題Aについては,初年度の到達目標である小課題を達成することができた.課題Bについては,優先度を考慮したうえで,当初2年目の実施を想定していた小課題を前倒しで実施し,一定の知見を得る意とともに,今後の課題を明確することができた.また,試作機の連続運転にむけても,一定の進展が得られた. さらに,これらの成果を,2015年度日本冷凍空調学会年次大会,およびThe First Pacific Rim Thermal Engineering Conferenceにおいて発表した. 以上の理由により,おおむね順調に進展していると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
課題Aについては予定通り進行中であるため,当初の計画通り,吸収過程の条件がシステムの効率におよぼす影響のシミュレーションを実施する. 課題Bについては,2年目に予定していた小課題をこれまでに前倒しで実施した結果,問題解決のための課題を明確化することができた.今後は,氷スラリーの閉塞・流れの不均一化の原因であると予想される,配管の絞り部における流動に注目し,氷スラリーの流動挙動の時間変化について検討する.これにより,氷スラリーの流れの不均一化を引き起こす原因を明らかにする.
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