研究課題/領域番号 |
15K17989
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
福永 鷹信 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 技術職員 (60591196)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 水素漏洩検知器 / 白金薄膜 / MEMSセンサ |
研究実績の概要 |
本研究では,金属薄膜で作られたセンサを用いて,その電気的・熱的特性に及ぼす水素ガスへの暴露時間,ガス圧力(水素分圧),センサ温度等の影響を実験的に明らかにする.そして,水素ガス暴露の影響の有無を明らかにするとともに,その再現性,可逆性などを定量的に評価し,常温駆動型水素漏洩センサの新規開発を試みる.平成27年度は,以下に示す研究を遂行した. ①水素ガス暴露用真空容器およびガス供給システムの確立:白金薄膜MEMSセンサに水素ガスを定量的に暴露させるため,水素ガス暴露用真空容器の作製を行った.水素ガス暴露用真空容器は,申請者所属研究室が所有していた恒温真空チャンバーを基にガス導入配管,熱電対や温度指示計および試料固定用セラミック板を新たに取り付け,改良を施した上で作製した. ②MEMSセンサの作製:白金薄膜MEMSセンサの作製に必要な装置,機材は所属機関がすべて所有していたため,滞りなくMEMSセンサを作製することができた.なお,センサ発熱部分となる微小薄帯のサイズ寸法は,予備実験の水素ガス暴露により白金薄膜の特性が変化した時と同じく,長さ10μm,幅500nmとして作製を行った. ③水素ガスの暴露が白金薄膜の電気的,熱的特性に与える影響の評価:金属薄膜MEMSセンサに水素ガスを暴露させ,物性変化の始まりから収束までの過程を定量的に明らかにするため,まずは暴露前後の金属薄膜の電気的,熱的特性の変化に焦点を絞り実験を遂行し,特性変化の再現性および可逆性を含めて検証している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載していたとおり,水素ガス暴露用真空容器およびガス供給システムの確立,MEMSセンサの作製は終えており,現在は水素ガスの暴露が白金薄膜の特性に与える影響を調査するとともに結果の再現性について確認している状況である.研究は概ね計画どおりに遂行していると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
今後は当初の計画どおり,引き続き水素ガスの暴露が白金薄膜の特性に与える影響の定量的評価を行う.白金薄膜の物性の変化の始まりから収束までの過程を定量的に明らかにするため,センサの測定温度,水素ガス暴露の圧力,水素分圧をパラメータとしてセンサ特性の変化を評価する.暴露実験から得られた特性変化メカニズムに応じて柔軟に研究計画を修正し,水素漏洩検知センサの確立を目指す.センサ特性の安定性が確認された場合は,金属薄膜MEMSセンサを水素漏洩検知に応用することを目指し,間欠的サンプリングによる常温駆動型水素漏洩センサの新規開発を試みる.また,水素ガス暴露によりセンサ特性の変化が認められた場合は,金属薄膜の成膜方法の変更,薄膜の改質を行い暴露による影響を低減する成膜手法を考案する.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の使用予定額と実績の差の主たる要因は,計画調書の段階で申請していたマルチガスアナライザーが予算減額のため購入できず,支出しなかったことにある.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度実験計画の遂行におけるMEMS作製に関わる消耗品の購入や水素暴露によるセンサ特性変化に伴って変更される研究計画に応じて使用する計画である.
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