研究課題/領域番号 |
15K17992
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
橋本 望 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70392751)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 微粉炭燃焼 / 数値シミュレーション / 揮発分 / 熱分解 / すす / 非定常解析 / 固体粒子 |
研究実績の概要 |
固体燃焼場の非定常数値シミュレーションを対象として,粒子から揮発分を放出する現象の高精度なモデルを開発し,数値解析コードへの組込みを行った.タールを含む13の化学種を揮発分として仮定し,粒子の昇温速度に応じて揮発分の放出量および放出速度が変化する現象を再現できるモデルとした.予め詳細な熱分解データベースを作成し,燃焼場中の粒子の昇温速度に応じて熱分解データベース中の揮発分組成および揮発速度パラメータを選択する計算手法の採用により,本モデルの採用による計算時間の増加を限りなく低く抑える工夫を施した.また,揮発分の一部として粒子状物質(PM)の前駆物質であるタールをモデル化していることにより,今後,固体燃焼場を対象としたPMの生成・酸化モデル開発を円滑に行うことができる.
開発したモデルを組み込んだ数値解析コードを用いて,小型微粉炭ジェットバーナ(0.5 kg-coal/h)の燃焼場を対象としたラージ・エディ・シミュレーションを実施し,開発したモデルの採用により微粉炭火炎が精度良く再現されることを明らかにした.また,数値シミュレーション結果から,燃焼場中の粒子の昇温速度は粒子径によって大きく異なることが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度に実施予定であった,非定常計算に対応した固体粒子から多環芳香族炭化水素(PAHs)を含む揮発分を放出する現象の高精度なモデル化について,当初の予定通り,モデル化を行い,数値解析コードへの組込みを行うことに成功した.また,当初の予定通り,開発したモデルを用い,小型微粉炭ジェットバーナ(0.5 kg-coal/h)の燃焼場を対象としたラージ・エディ・シミュレーションを実施し,計算精度の検証を行うことができた. 以上のことから,研究の進捗状況としては,研究計画通り進んでいると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
研究の進捗状況として,研究計画通り進んでいることから,今後も当初の研究計画通りに研究を進める.初年度に開発した高精度揮発分放出モデルをベースに,(1)PAHsが温度,酸化剤濃度等の条件に依存する速度で反応し,すす粒子が生成される,(2)すす粒子がPAHsと反応して成長する,(3)すすの一次粒子が酸化される,という3つのプロセスのモデル化を行う.開発したモデルを数値解析コードに組み込み,小型微粉炭ジェットバーナ(0.5 kg-coal/h)の燃焼場を対象とした数値解析を行う.発表済み論文の実験データとの比較を行い,微粉炭燃焼場非定常解析における揮発分放出,すす粒子生成,すす粒子成長,すす粒子の酸化,の4つの連続したプロセスのモデル精度の検証を行う.具体的な検証方法としては,時間分解誘起赤熱法(TIRE-LII)によって取得したすす1次粒子径分布の空間分布データと数値解析結果を比較することにより,すす粒子の生成,成長,酸化反応過程の再現性を検証する.数値解析結果と実験データに隔たりが見られた場合は数値解析モデルを修正し,高精度なモデルの構築を目指す.また,実験的手法では解明が難しい乱流による混合とすす粒子生成・成長・酸化過程の相互作用を明らかにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
北海道大学の経理報告上,3月末までに納入され,4月支払いのものは,最終年度を除き,次年度に計上されることとなっており,上記61,622円は全てこれに該当する.そのため,実質的には使用済みである.
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次年度使用額の使用計画 |
上述の通り,実質的には全て使用済みである.
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