固体燃焼場の非定常シミュレーションを対象として,粒子から揮発分を放出し,揮発分からPM(すす)が生成される現象の高精度なモデルを開発し,数値解析コードへの組込みを行った.タールを含む13の化学種を揮発分として仮定し,粒子の昇温速度に応じて揮発分の放出量および放出速度が変化する現象を再現できるモデルとした.予め詳細な熱分解データベースを作成し,燃焼場中の粒子の昇温速度に応じて熱分解データベース中の揮発分組成および揮発速度パラメータを選択する計算手法の採用により,本モデルの採用による計算時間の増加を限りなく低く抑える工夫を施した.放出された揮発分のうち,タールはすす生成の前駆物質として扱い,タールの酸化反応とタールからすすへの変換反応が競合するすす生成モデルを構築した.生成したすすは,酸化反応により酸化される現象および凝集により粒子数が減少し,粒子の大きさが成長する現象を考慮するモデルとした. 開発したモデルを組み込んだ数値解析コードを用いて,小型微粉炭ジェットバーナ(4 kW)の燃焼場を対象としたラージ・エディ・シミュレーションを実施した.開発したモデルの採用により,微粉炭燃焼場中におけるすす粒子の生成を再現することに成功した.小型微粉炭ジェットバーナを対象として光学計測により取得したすす粒子の濃度分布と,本研究で開発したモデルにより予測したすす粒子の濃度分布を比較した結果,両者の傾向は非常に良く一致し,開発したモデルの計算精度が高いことが検証された.
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