複数の構造を組み合わせて全体系の解析モデルを構成する際に,構造設計上最も使用しやすい位置拘束を用いた数理モデルの改良を行った.この拘束を使った数理モデルは運動方程式が本質的にスティフ系になることから数値積分が困難であったが,平成27年度に導入したスケーリング法によりこの問題は解決している.平成28年度は,系の非線形性を生む原因となる回転運動の表現に時間離散による増分量を導入し,精度を保持しつつ運動方程式の簡略化・自由度の低減を実現した(手法1).また,並行してオイラーパラメータを用いた数学モデルも構築した(手法2).また,数値積分には時間に関して重み付き積分を併用したEnergy-momentum法を導入し,手法のさらなる改善を試みた.また,上記の2モデルでは時間離散系の使用を前提としているため,状態推定法としては拡張カルマンフィルタの適用がスムーズであるが,この方法を直接適用するためには,拘束条件を消去したモデルを使用することが望ましく,運動方程式が極めて複雑な形になる.また,Local Lagrange multiplierを用いることの重要な利点である並列処理における計算工程の効率化の効果も限定的になる.拘束系を使用するという定式化のメリットを最大限に活かすには使用する微分代数方程式を状態推定法に合わせて調整する必要があるが,一般的な体系化(汎用的性が高いもの)が現時点では困難なため,今後の課題としたい. 一方,弛緩係留を想定したモデルを対象に実験を行い,チェーンの変位の計測結果を用いて妥当性の検証を行った.手法1,2ともに実験結果とは良好な一致を得たが,計算自由度の観点からは手法1,収束の速さの観点からは手法2にそれぞれ優位性が見られた.なお,静的つり合いの計測時から実験結果に若干のオフセット誤差が含まれていたため,データ計測に関してはまだ改善の余地がある.
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