研究課題/領域番号 |
15K17996
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
関 健太 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70432292)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 運動制御 / 振動試験機 / 機構解析 |
研究実績の概要 |
本研究は、構造物の耐震性能を実験評価するための振動試験機を対象としている。対象とする振動試験機の加振機構は、従来の振動試験機に比して設置スペースの低減をねらっている。そこでは、機構成立性の実証のみならず、高い地震波再現性能を獲得するために、各加振機を協調動作させる制御アルゴリズムの開発が必要となる。平成27年度は、振動試験機の実機応答を忠実に再現する制御シミュレータの構築と、評価用プロトタイプの試作を行った。さらに、各加振機を協調動作させる指令生成アルゴリズムと各加振機を安定に動作させるフィードバック制御系を構築した。具体的な内容は次の項目のとおりである。 (1)加振機制御系とフィードバック制御系を制御系設計ソフトウェアで、4台の加振機から発生する力によって動作するテーブルの3次元運動を機構解析ソフトウェアでモデル化し、両者を連成して動作させることで実機の挙動を再現する評価用シミュレータを構築した。 (2)所望のテーブル動作を入力として、テーブルと加振機の位置関係を基にした各加振機の指令信号を生成するアルゴリズムを構築した。 (3)各加振機に対して、入力指令に基づいて安定に動作するフィードバック制御系を構築した。そこでは、制御対象に含まれる共振振動を抑制するための圧力フィードバックと、変位センサ信号に基づいた比例積分補償器を設計した。さらに、各加振機の位相遅れが入力周波数によって異なるため、零位相差追従制御器をフィードフォワード補償器として設計し、位相遅れの補償を行った。 (4)制御アルゴリズムや機構動作検証を行うために、研究室で実験可能な試作機を製作した。試作機は、基礎検討用として水平2軸、回転1軸の平面3自由度を持つ機構とした。さらに、試作機を用いて基礎的な動作確認を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成27年度は、(1)シミュレータの構築、(2)位置指令の生成法の確立、(3)加振機の制御系設計、(4)実験評価用の試作機製作について実施した。(1)(2)(3)に関しては、当初の計画通りにシミュレータ、位置指令生成法、加振機制御系の構築ができている。加振機制御系に関しては、すべての外乱を考慮した制御系とはなっていないため、実機実験を通して外乱要因を分析し、それらをシミュレータに組み込んでフォードバック制御系の再構築を実施する必要がある。それ以外の点に関しては、概ね順調に進展している。(4)に関して、試作機を水平3自由度の単純な構造とすることで速やかに試作に取り掛かることができ、年度内に完成することができた。当初の計画より早く試作機が完成したため、予算を前倒し申請して計測器類を購入した。そして、試作機を用いて設計した指令生成アルゴリズムと制御器を実装し、基本動作を確認することができた。この点に関しては、当初の予定以上の進展があった。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、前年度に構築した試作機を用いて、シミュレータの更なる高精度化、実機で発生する外乱要因の分析とそれを考慮した制御系設計、試作機を用いた実験評価を推進する。特に、実験結果により得られた結果を詳細に分析し、シミュレーションで再現できなかった項目を抽出してシミュレータに組み込むことで、実機応答の再現性を高める。その結果やシミュレータを基にして、加振機制御系の再構築を行う。特に、試験対象物が搭載された際に生じる質量変動やモーメントの影響を考慮する。構築した制御系の有効性について、試作機を用いて様々な動作条件を用いて検証を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究実績の概要および現在までの進捗状況で記載の通り,当初の研究計画より早く試作機の製作が完了したため,当該年度内に計測実験を実施することが可能となった。そのため,新たに計測機器を購入するために前倒し支払い請求を行った。購入した計測機器が当初の見積もりよりも安価に購入することができたため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
生じた次年度使用額は,翌年申請助成金と併せて,物品購入や旅費として使用する。
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